4 / 31

弁当男子_4

 今日の授業が終わり、帰ろうと下駄箱へ向かった所で三人の男子に囲まれ、それを無視して避けようとしたところに腕を掴まれて振り向いた。 「離せよ」  一人だけ俺と背丈が同じ位の奴がいて、俺のシャツを掴んで顔を近づけてガンをつける。確か、田中とか呼ばれてたな。 「逃がさねぇよ。朝の続きでもしようぜ」  少し離れた場所で女子がこちらを見ている。あぁ、そういう事か。良い所を見せたいって訳。  くだらねぇ。  やる気のない俺の頬に田中がパンチを食らわせた。それが意外と重く、唇の端が切れ血が流れた。  多少、腕に自信があるのだろう。だから喧嘩を吹っかけてきたのか。  だが、俺は昔からこんなだから喧嘩は強い方だ。一発殴り返してやった所に、タイミングよくそこに神野が現れた。 「何しているの?」  こんな神野は知らない。  俺でも怯むような、ゾクッとくるような鋭い目つきでこちらを見ていたからだ。 「こいつが喧嘩を吹っかけてきたんだ」  と殴った奴が俺を指さした。  本当かと怖い顔で見る神野に、俺は小馬鹿にしたように笑う。  神野はこいつらの仲間だ。きっと彼らを庇うだろう。だから何を言っても無駄だと思ったからだ。 「ムカつくんだよ、こいつ等。だから殴った」 「そうだ、コイツが」 「……なんてね。そういう事を言いそうだなって証拠を撮ってた」  スマホの画面を見せる。そこには相手が先に殴った証拠が撮られていた。 「なっ」  まさか初めから見られていたとは思わず、俺も相手の男達も黙り込む。 「なんか様子がおかしいから、君達の後をつけてきたんだけど、こんなことになっていて驚いたよ」  と肩をすくめ、 「喧嘩両成敗って事で良いよね? クラスメイトが処分されるのは嫌だからさ。 ねぇ、君らもそう思うよね」  と木の陰から見ていた女子に声を掛ける。 「うん、私もそれは嫌だな」  いい子ぶって可愛さをアピールする女子にウンザリとする。男どもをけしかけたのは彼女たちだろう。  神野に本当は止めようと思ったけど怖かったの、と、まとわりつく。あざとくて気持ち悪い。 「ほら、君達は彼らの怪我の手当てをしてあげて。葉月は俺がするから」  そういうと腕を掴まれて無理やり引っ張られた。

ともだちにシェアしよう!