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第五話
「なんか、早かったなぁ~卒業」
「そうですねぇ」
教室の窓辺から、ポツポツと小さな花を芽吹き始めていた桜の木を早川と二人で眺める。
「というか、卒業式までに桜咲きませんでしたね」
「ま、さすがにまだ早いだろ」
「なんか残念です」
「入社式の時には満開だろうよ」
「なんか、それはそれで……」
「あ?なんだ?嫌なのか?」
「だってなんか「社畜人生おめでとう!」って言われてる感じなんですもん」
「じゃあ俺が電話で言ってやるよ。これで俺と仲間入りだなって」
「嫌ですーー!止めてくださいーー!」
「ククッ。冗談だ」
いつもと変わらない場所で、いつもと変わらないなんてない話し。
それなのに、俺の心臓はいつもより落ち着かない。
スーツに身を包んだ早川が、いつもより大人びて見えるせいか。
それとも、今日が卒業式という特別な日だったからか。
「……こほっ」
どんなに目を逸らしても、ドキドキはより一層大きくなっていく。
「先生」
「な、なんだ?」
「僕と一緒に、住んでくれますか?」
「……え。えぇ!?」
「僕これからも先生と一緒に居たい。大事にしたい」
「え、お、あ、う、うん」
ヤバいヤバいヤバい。心臓が無茶苦茶煩い。
ドキドキしすぎて、今にも破裂しそう。
「卒業しても、僕はずっと先生の事愛しています。だからこれからも僕と一緒にいてください」
まるで誓いの言葉のように、早川は俺の手を握った。
ずっと変わらない。真っ直ぐに俺を見つめる目。
その目が好きだから、俺は覚悟を決めたんだ。
「あぁ。俺もお前を愛してる」
きっとお前となら何度終わったとしても、もう一度始められる。
そんな気がするんだ。
「あ、後。沢山SEXしましょうね!」
「……台無しだ、馬鹿」
卒業しても、コイツは意外と何も変わらないのかもしれない。
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