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第6話

「じゃ、オレはこっちだから。佐奈入学おめでとう! 学校で会えなくなるのは寂しいけど」  中等部は昨日が入学式だっため、今日は始業式だ。 「ありがとう! でも家帰ったら嫌でも会えるし、それに一年の辛抱だろ?」  慎二郎に佐奈はそう言うが、何故か大きなため息を吐いてから、おざなりに二人へと手を振って中等部への校門をくぐって行った。  本来入学式は在校生は休みなのだが、三年の生徒会役員と、二年生代表数名が出席する。優作は二年生代表として選ばれたようだ。久しぶりに三人揃っての登校だが、美しい兄弟は皆の憧れの的で、家を一歩出るだけで注目の的となる。一駅だけ利用する電車も、二人が乗る車両はいつも満員となるのだ。  校門をくぐると一瞬で囲まれる慎二郎から、隣に立つ優作へと佐奈は視線を移した。 「何でため息吐いたんだろ……」 「さぁな。ほら、行くぞ」 「……うん」  優作にあっさりと促されてしまえば、佐奈は頭を切り替えるしかない。こっそりと肩を竦め、二人は隣の敷地に建つ、高等部の校門へと歩みを進めて行った。  佐奈の緊張はいまピークに達している。初めてくぐる校門。これから待っている高校生活への不安と期待。新入生らしい緊張と言いたいところであったが、そうではなく、優作と一緒に高等部の敷地に足を踏み入れる事に、究極にまで緊張してしまっていた。  生徒らは皆、優作が現れれば道を開ける。そして魂でも抜かれたかのように、誰もが陶然とし、中には頬を赤く染めている者もいる。小学生の時や、中等部でも見てきた光景だが、佐奈は一向に慣れる事が出来ない。当の本人はと言うと、気にしている様子は微塵もない。

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