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第9話
「で、さっきの倉橋くんの質問だけど、答えはイエスよ」
佐奈の代わりに篠原が答える。倉橋は篠原に頷いてから、まじまじと佐奈を見つめる。
「そんなに見ないでくれよ」
「いや……悪い。全然似てないっていうか、向こうはほぼ外国人だよな……」
似てないのは当然だと、佐奈は倉橋に事実を伝えると納得したのか、しきりに頷いていた。そして再び倉橋は佐奈を見つめ始める。
「でも、よく見ると深山も結構綺麗な顔立ちしてるんだな。傷みを知らない綺麗な黒髪に、黒目がちの目で、色も白いし……」
「ちょっと! よく見なくても佐奈くんが綺麗なのは直ぐに分かるじゃん!」
突然怒りだした篠原に圧倒されたのか、倉橋は素直に謝っていた。しかし倉橋の言うとおりに、佐奈は儚げ美人と言ったところだが、美し過ぎる兄弟に挟まれて埋もれてしまい、見落とされている。佐奈本人はそんな兄弟を長年見てきたせいか、自身の顔に関しての評価は低い。
佐奈のクラスには外部生が十名いたが、倉橋の絡みもあり、直ぐに皆、打ち解ける事が出来た。
そして入学式も無事終え、佐奈は優作と慎二郎と三人で行きと同様一緒に帰り、ヨーロッパ風のエレガントな豪邸の玄関扉を開けた。すると、熱烈な抱擁の出迎えが待っていた。
「ohハニー! マイハニー! ん~キュート!!」
「アビーお帰り! 父さんも」
佐奈は慣れた様子でアビーの温かい身体に腕を回し、抱きしめ返す。アビーは少し興奮したように、佐奈の顔中にキスの雨を降らしていく。
「あー佐奈、私の可愛い佐奈。高校生になったのね、おめでとう!」
「ありがとうアビー」
「佐奈、おめでとう」
「ありがとう父さん」
玄関先で三人は再会に喜び合うが、優作と慎二郎は白けたように、さっさと中へと入って行く。そんな息子二人の態度も毎度のことだ。
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