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第10話
佐奈の入学祝で、アビーが手作りした豪勢な食事を皆で堪能した後、各々がくつろぎタイムに入った。佐奈はキッチンでデザートにとリンゴの皮を剥く。久しぶりに家族が揃うと、佐奈はウキウキと嬉しくなる。三日後にはアメリカへ戻る両親にはゆっくりと寛いで欲しい。そんな思いで、明日からのメニューを必死に頭の中で立てていく。
「佐奈、皿はこれでいいか?」
「え!? あっ……っ」
「おい、指切ったのか!? 大丈夫か? 見せてみろ」
考え事をしていたため、佐奈は突然声を掛けられことに驚き、親指を少し切ったようだ。
優作は心配でたまらないといった風に、佐奈の手を掴む。
「だ、大丈夫だって……っ!?」
たかが軽く切った程度で大袈裟だと佐奈が手を引こうとした時、佐奈は我が目を疑った。
「ちょ……優作……何して……」
親指に僅かだが滲む血を、優作は舌先で舐め取っている。驚く中で、佐奈の全神経が親指に集中したかのように熱くなっていく。しかも事もあろうに、優作はそのまま親指を口に含んでしまう。
「ゆ、優作……!?」
慌てて手を引こうとする佐奈だったが、そうはさせまいと強く握り込まれる。優作の熱い咥内。舌は何かの意図があるかのように、佐奈の指先を這うように舐めているのが分かる。
一体何をしてるんだという疑問よりも、ただただ佐奈はどうしたらいいのかが分からなかった。現状を上手く処理出来ない中、腰には力が入らず、下腹部も何か熱が灯りそうになり、佐奈はそんな自分にショックを受けた。
「優作──」
「ゆう! アンタのスマホ鳴ってるよ」
リビングからアビーの声。優作はゆっくりと親指を咥内から抜く。ただそれだけの事が、何かとてつもなくやらしく佐奈の目に映った。
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