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第14話

「いや、別にお近づきになりたいとかそういうことじゃなくてさ、純粋に疑問だったから訊いただけ」 「そっかそっか。ならいいんだけど。ちなみに彼女ってどうなんだろ。特定の人と長くいるの見たことないし」  元は倉橋に答えながらも疑問は佐奈に訊ねてきたため、佐奈は緩く首を振った。そしてそれは佐奈が一番知りたいことであり、知りたくもない事だった。優作が彼女と仲睦まじく一緒にいる姿など見たくないからだ。幸い今まで両親がほぼ家に居ないながらも、優作は女性を家に連れて来たことが一度もない。中学の時でも、彼女らしき女子生徒と二人で登下校する姿も見たことがない。常に沢山の女子には囲まれてはいたが。 「でもあの顔で名前が、ゆうさく? すげぇ違和感だよな」  倉橋は結構ストレートに物を言う。まだ出会って二日目で、中等部の皆と同じく仲を育んできたわけではない。普通なら〝嫌われたくない〟という心理が働き、オブラートに包むなどをして遠慮をするものだ。  だが倉橋の持つおおらかな雰囲気がそれをカバーし、誰も嫌な顔はしない。佐奈もそうだった。 「アビー……母さんは日本が大好きで、特に芸能人の松村優作が好きで、子供が出来たら絶対付けたかったらしいんだ」 「なるほどね」  それから倉橋は何故か佐奈にばかり色々と質問してきたため、少し疲れてしまっていた。そのため休憩時間になると、佐奈は喉が渇いたからと一人教室から出て行った。 「えっと確か自販機は……あの突き当たりを左だったよな」  広い校舎内ゆえ、慣れるまでは迷いそうだと、佐奈は静かな廊下を突き進んで行く。

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