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第26話
「佐奈……お前、なんか手が震えてないか? 顔も赤いし。熱があるんじゃ――」
「っ……だ、大丈夫!!」
自身の額に置かれた優作の大きな手を、佐奈は慌てて引っ剥がした。
「た、ただ、優作の身体が羨ましくて興奮しただけだよ! それより、今日一緒にいた人って先生?」
「一緒?」
「ほら、途中呼び止められてただろ?」
「あぁ……先生だ」
優作はまだ疑わしそうに、佐奈の顔を見てくる。必死に落ち着けと佐奈は自身に言い聞かせるが、じっと見られていては、余計に顔が熱くなりそうだった。
「すごい仲が良さそうだったね……」
「そうだな。アイツは一年の時に副担やってて、今は担任なんだよ。すげぇ人使い荒い奴だけど、いい先生だと思ってる」
「へぇ……」
優作が他人を誉めるなど、かなり珍しい。よっぽどいい先生なのだろう。
「三國 先生だっけ? なんか、オレに似てるって聞いたんだけど、似てるの? 遠目だったし、自分じゃ分からないから」
「うーん、そうだな……確かに初めて見たときは、雰囲気が似てるって思ったな。今じゃ全然似てるとは思わねぇけどな。それより……」
優作は徐 に身体を佐奈へと向け、紺碧の目でまっすぐと佐奈を見つめてきた。佐奈には再び緊張が襲う。
「な、なに?」
「一緒にいた奴、外部?」
「うん。倉橋って言って、あの通りのイケメンだから女子にモテてるよ」
「ふうん……」
関心のない返事をしつつ、優作は何かを考えるかのように眉を寄せている。
「倉橋がどうかしたの?」
「いや、佐奈があの安西とかいう奴と一緒にいない時に、誰かと二人で行動するのが珍しいと思ってな」
「そうかも。特に今日は生物の席取りでみんな競争だったから。でも倉橋とは仲良いよ」
「そうか」と優作は佐奈に微笑むが、その目が笑っていないことに気付く。
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