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第27話
優作がこういう目をするときは、気に食わないと感じている時だ。
「優作、なにか怒ってる?」
「俺が? 何も怒ってねぇよ」
「本当に? なんかちょっと不機嫌だし」
ボソッと呟くように言うと、優作は観念したかのように、シャンパンゴールドの髪を掻き乱すように頭を掻いた。
「あー悪い! ただのヤキモチ」
「ヤキモチ?」
佐奈が小首を傾げると、優作は急に覆い被さるかのように佐奈の身体を腕の中に収めた。
「ちょ、優作!?」
「可愛い弟を盗られた気がしてな」
わしゃわしゃと頭を撫でられながら、佐奈の胸中は複雑だった。
どんな形でも抱きしめてもらえるのは幸せだ。可愛がってもらえるのも幸せ。だけど〝可愛い弟〟という認識しかないという決定的な言葉は、本人の口から聞くのはやはり堪えた。兄弟という間柄で何を期待しているのかと、頭で分かってはいても。
「もう、優作も弟離れしないとダメじゃん」
「〝も〟って何だよ。俺とシンを一緒にするなよ」
「おい、そこの二人! オレが風呂入ってる間に何してんだよ!」
いつの間に風呂から上がったのか、スウェットを着た慎二郎が仁王立ちで二人を睨んでいた。
「何って見たら分かんだろ? スキンシップだよ」
優作は慎二郎に見せつけるように、更に佐奈を抱きしめ、頭を優しく撫でる。佐奈は佐奈で慎二郎に疑われないように、何でもないフリをするのに苦労する。
「スキンシップって、ユウがやるとエロいんだよ!」
「お前の脳内よりはマシだろ」
「はぁ!? どういう意味だよそれ。それよりいつまで佐奈に触ってんだよ! いい加減離せ」
強引に引き剥がそうと、慎二郎は優作と佐奈の肩を割り開こうとする。
「ちょっと慎二郎、なんでそんなに怒ってるんだよ。慎二郎だってやるじゃないか」
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