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33-ガタンゴトン[知れば知るほど]2

後ろ髪引かれる思いで列車に乗り込んだ。 車内から手を振ったけど、ホームに残った真矢の姿はすぐに闇に飲まれてしまった。 オレが下車する駅までは一時間ちょっと。 滅多に列車に乗らないオレには小旅行並みだ。 けど行きと違って、今日あった事が次々に思い返されるから、暇を持て余す事はなさそうだ。 ――『普通』っていうのは人それぞれ基準が違うんだよ? そんな真矢の言葉を思い出す。 あの山と川に挟まれた、真矢にとって当たり前の環境に、オレの『普通』はほとんどなかった。 同じ高校に通って毎日のように会っているのに、家に遊びに行ったら遠距離恋愛でもしてるみたいな気分になるなんて。 なんか不思議なカンジだ。 けど、真矢を育てたあの場所をオレは好きだと思った。 なんだか興味深くて面白い。 そう頻繁には行けないだろうけど、次に遊びに行ったときは蔵の部屋でイチャイチャするだけじゃなく、真矢の家族とゆっくり話してみるのも楽しそうだ。 話を聞けば聞くほど謎が増えそうな予感がする。 例えこの先、真矢の全てを知って、真矢の事を一番知ってるのはオレだと胸を張って言えるようになっても、きっと真矢はオレにとって興味深い存在のままに違いない。 人生経験なんかそんなねぇけどわかる。 真矢はオレにとって『特別』だ。 もっと知りたい。 そして、これからきっといろいろ環境が変わったりするコトもあるだろうけど、そのたびに、新しいオレたちのカタチを一緒に生み出していけたら幸せだな。 まったりとそんな事を考えていたのに……。 イタズラに笑う真矢の顔。 そして……。 ――『欲情に身体を熱くしたまま、一人列車に乗って、振動で俺の身体を思い出しながら甘い疼きに耐えるサヤちゃん』とか、かなり萌える 余計なコトまで思い出してしまった。 列車に揺られるのと、真矢に揺すられるのは全く違うだろ……。 『余計な考え』を打ち消すために考えた事のせいで、よりはっきりと、グッと押し込まれる感触まで生々しく、真矢のカラダを思い出すハメになる。 さっと足を組み、勝手に緩んでしまう顔を隠すために、下を向いて腕組みもして、寝たフリをする。 ついさっきまでの蔵での事がどうしても頭をよぎる。 アノ後、裸でまったりしながら、散々イチャイチャした。 ベッドで目の前にあった真矢の指をくわえた。 見た目に合わぬ、ちょっとゴツい指だ。 以前『真矢ってけっこう力強いよな』って言ったときに、家で手伝いをしたときに重い物運ぶから、自然と強くなったんじゃないか……って言ってた。 そんな事で鍛えられるもんかなって不思議だったけど。 酒蔵か……。 まあ、重い物はいっぱいありそうだ。 ていうか、重い物しか無さそうだ。 家族で真矢より力が弱いのは妹だけって言ってたっけ。 てことは、バァちゃん……すげぇな。 ……これでどうにかエロい連想から気をそらすのに成功した。 と思ったのに…。 舌が勝手に真矢の指をしゃぶった感覚を思い出す。 指をくわえると、何故か子供みたいに甘えたくなるんだよな。 ……オレ、ガキの頃、いつまでも指しゃぶるクセが抜けなかったな。 今でもほんとたまにだけど、気がついたら小指の付け根をガジガジしてる事がある。 ツメ噛みもたまにやる。 真矢の手を取って一本、二本と指をしゃぶるオレの頭を、優しく撫でてくれた。 あの時、何故か全てを許されたみたいな気分になった。 どんなに甘えたって真矢は受け入れてくれる。オレを甘やかす事で真矢も満たされてるんだって伝わってくる。 幸せ過ぎる。 マシュマロのような時間。 なのに真矢の指をしゃぶりながら、どうしても『アレ』が脳裏にチラつく。 したかったけど、まだ出来ていない。 真矢に『してくれ』と言われないと、自分からじゃ言い出しにくい。 ……けど、真矢が言い出すより先に、オレから『させて欲しい』ってねだってしまいそうだ。 いや、案外真矢がオレにしてくれて、お返しでオレもって流れもあるかもしれない。 はぁ……やっぱ、今日させてもらえば良かったかな。 ホントは真矢のを……したくて、その代りに指をしゃぶりはじめたんだもんな。 指しゃぶったのも、まったりとして幸せで、すごく良かったけど。 そうだ、オレだけイかせられたんだから、あの後にすれば良かったんだ。 真矢がオレにくわえられて、一人気持ち良さそうに声を漏らすとことか……。 ああ……最高だ。 真矢の切なげな顔が見たい。 録画で何度も聞いた、フェラされるちょっと切なげな真矢の声を、演技なしの生ボイスで聞きたい。 っはぁ……ヤバい。 ちょっと鼻息が荒くなりそうだ。 『ん……サヤちゃん…俺ももう…イキたい』 …はぁ……。 真矢の声、最高にエロかった。 けど、終わった後の 『サヤちゃん。大好きだ』 アレはマジでヤバかった。 こういう、わかりやすい言葉ほど、魂を持っていかれる。 真矢の言葉には、力がある。 ………。 って、ホントにヤバイ。 少し……身体が反応しかけてる。 ソウイウコトは、もう考えないようにしないと……。 けど……はぁ…真矢……。 イヤダメだ……。 オレの恥ずかしい格好見て ――『滅茶苦茶エロい眺めだな』と思って、見とれてた とか、バカな事言ってた……。 はぁ……ダメだって。 考えるな。 列車の中なんだぞ。 考えるなら、真矢の家族の事とか、もうちょっと違う事……。 てか、真矢の父さん、オレ達がイチャイチャした空気出してるのに全く気にしてなかったな。 気付かなかったのか、それとも……。 いや、知ってるとか……ないよな? そんなコト、真矢言ってなかったし。 あれ?でも、オレのこと相談してるって言ってた。 相談て……。 どこまで? でも、リアルにナニをしてるのかとかまではさすがに……。 さすがに真矢でも言うわけないよな。 あんな……。 はぁ…それにしても……今日マジで真矢……スゴかった。 ガツガツされると、嬉しくって、胸がキュッとなって、ちょっとくらいなら痛いのも脳内の快感を増してくれる。 頭ん中真っ白になってほんと……。 考えまいとすればするほど『二人の時間』が頭をよぎる。 すでに少し反応してしまっている身体が、これ以上大変な事になっちゃあマズイ。 冬で良かった。 服でかなり誤摩化せる。 けど、歩きづらいほど反応してしまうとホントにヤバい。 車内が空いてるとはいえ、痴漢に間違われる可能性だってある。 とにかく、エロい事は頭から排除して、下半身の沈静化に努めねぇと。 乗車時間はまだ数十分ある。 妄想と股間の地味な戦いはまだまだ続く。

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