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閑話2:出てくる予定の設定のお話のお話。
三章の間拍手御礼として掲載していたSS。
27話から29話くらいの話で、桐田家訪問前です。
『出てくる予定の設定』とありますが、すでに掲載済みの内容に関するお話です。
――――
最近は毎週のように真矢が遊びに来てくれる。
カズやフウ太がいる時とは明らかに空気が違う。当たり前なんだけど、ちょっと不思議だ。
「真矢ってけっこう力強いよな」
なんだかんだ行き違いがあった時に、ちょっとだけ押さえつけられたりとかした。
基本乱暴なことはしないけど、純粋に力比べをしたら、もしかしたら負けるかもしれない。
「何かトレーニングとかしてるのか?」
「うーん。別に力が強いなんて思ったことないけど。強いて言うなら家でちょっと手伝いするとき重い物運ぶくらい?」
「へぇ……」
家の手伝いって言葉に驚いた。
やっぱコイツかなりイイ子ちゃんなんだな。
オレ、家の手伝いとか……。
あ、食器洗ったりはするか。一人でメシ食った後限定だけど。
「ま、でも、ほんとちょこっとだよ。ほんとに重いものはさすがに人力じゃ運ばないから」
「へぇ……」
日常的にそんな重い物運ぶこともなさそうだけどな。
「ウチじゃ非力な方だと思うし」
「そうなのか?」
「ああ、俺より弱いのは妹くらいだよ」
なんだそれ……桐田家、怪力家族なのか?
「今度、真矢んち行ってみてぇ」
「ああ、ぜひ来て欲しいけど、年明けしばらくはちょっと忙しくて、父さんも母さんもちゃんと挨拶できないかも」
「えっっ。いや、挨拶とか……」
「今人の出入りも多くて慌ただしいし。ちょっと暇になってからの方がいいかな」
「そうなんだ」
「なんなら泊まりにおいでよ」
「はっ!? いや、それはっっ」
かぁっと耳が熱くなった。
真矢んちはウチからちょっと遠いらしい。
コンビニの前に夜中に若者がたむろしてたら『どうした?今日は何かあるのか?』と、長距離トラックの運ちゃんがじろじろ見るくらい、のどかなトコのようだ。
だからこその『泊まりにおいでよ』なんだろうけど。
泊まりに行ったらやっぱり、そりゃふれ合いたくなるに決まってる。
けど、オレ……かなり声が……。
何を心配しているのかわかったんだろう。真矢がふふっと密やかに笑った。
「母屋とは別棟に勉強部屋代わりの部屋があって、今じゃそっちで寝起きしてるんだ。だから、大丈夫だよ、サヤちゃん」
自分でも頬に紅が差したのがわかった。
もう、すぐにでも真矢の部屋に行きたい。
「サヤちゃん…そんな色っぽい顔されたら……」
真矢も同じように思ってくれてるんだろうか。
そう思った途端、グイッと抱き寄せられた。
やっぱり力が強い。
「ん……」
そしてすごく優しいキス。
ふんわりとした触れ合いを楽しんだあと、少しづつ、くすぐるように舌を絡めていく。
学校の屋上手前の階段の踊り場で、落ちこんでしまったオレを慰めるようにキスをして以降、毎日一回はキスをするようになっていた。
学校でヘロヘロになるのはマズイから、ちょっとふれるだけのキスだ。
でも、それだけで嬉しくて、幸せで、週末二人きりでゆっくり会うのがより楽しみになる。
「んぁ……もっと真矢ぁ」
唇が離れていったことを咎めるようにキスをねだる。
すると、グイッと押し倒された。
やっぱり力が強い。
けどオレの扱いは優しい。
顔の横で押さえつけるように両手をつないで、またキス。
始めは優しく、けど、だんだんとむさぼるようなキスになる。
「ぁ……はぁ…んっ……ん………」
切なげな声が漏れた。
ゲームのためにと練習をする前は、喘ぎ声なんてどうやって上げればいいのかわからなかった。
なのに、今じゃ止めようと思っても止められない。
耳にキスをされるとブルリと身体が震える。
「はぁ……」
真矢の息に耳をくすぐられ、それにも甘いため息が出る。
「サヤちゃん可愛い」
お決まりのセリフを言われると、喜びに胸が高鳴った。
「可愛くなんか……ない」
たまにこうやって、天邪鬼なことを言ってみたりする。
けど、真矢はわかってる。
「サヤちゃんは、可愛い。そんなひねくれたことを言うところも最高に可愛いよ」
こんな風にオレを甘やかす。
オレは真矢との関係をあまりオープンにはしたくない。
世間体とかって意味なら真矢の方が気にすべきだろう。
あまり素行が良くないと思われているオレとの付き合いは、教師とか無関係な人間ほど口を出したがる。
オレもそこは気遣いたい。
けど、オレがオープンにしたくない理由は、周知の事実となってしまえば人前でもおかまい無しに甘えまくってしまいそうだ……というユルいモンだ。
『恥ずかしい。なのにいちゃいちゃが止められない』なんて無限地獄に陥るくらいなら『秘密にする』という建前の元、いちゃつきすぎない努力をした方がいい。
けど、ここはオレの部屋だ。誰に気遣うこともなく真矢に甘えて大丈夫だ。
「真矢ぁ……。もっかい、ちゅぅ」
気持ち悪いくらい甘えた声が出る。
「うん。サヤちゃん、いっぱいキスしよう」
真矢がオレを甘やかす声はカッコ良くって色っぽい。
本当はオレも色っぽい声で誘えればいいんだけど。
んあ………んん。
ああ…もう、すげぇイイよぅ……。
オレ……。
そのうちキスだけでイけるようになったらどうしよう。
いや、そんな変なクセなんかつくワケない。
キス以上にキモチのいいこと……いっぱいするんだから。
《終》
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