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閑話1:小説に盛り込めなさそうな設定のお話。
一章から二章のあいだ掲載していた拍手用SS。
小説ではなく、キャラトークです。
まだ付き合う前。
――――
「有家川 っていい名前だよな」
桐田が唐突に言い出した。
「は?急にどうした」
「でも、聖夜って書いてなんでマサヤって読みなんだろ。普通セイヤだよな」
「その読みだと12月生まれ?とか聞かれて面倒だからな」
「読みがどうだろうと12月だと思うんじゃないか? というか、12月生まれじゃないのか。何月なんだ?」
「9月だ」
「!!!!おとめ座か」
桐田のテンションの上がるポイントはよくわからない。
「……いや、天秤座だ」
「なんだ。……まあ、天秤座っていうのも悪くはないか。チョンと押したらガクガクっときて……。うん、いいかもしれない」
……意味がよくわからない。けど、どうやらエロ妄想を展開しているようだ。
「で、なんで9月なのに聖夜なんだ」
「あー。ちょうど秋の例大祭の時期に産まれて、とーちゃんが『祭 』と『神楽 』のどっちかがいいって言い張ったけど、母ちゃんが間を取って『聖夜』がいいって……」
「……全然間を取っていな?」
「そうか?『祭』は神事だし、『神楽』は夜神楽とか薪神楽とかそんな意味合いだったらしいぞ?」
「じゃ、シンジでもよかったな」
「そうだな。……って、なんだよ、オレの名前に不満があるのかよ」
「なくはない。有家川聖夜=ウケガワセイヤ…やっぱりこっちの方が『名は体 を表す』って感じでいいと思うんだけどな」
「……ぜってーやだ。親に受になる運命を背負わされるとかイヤすぎんだろ。攻めキャラ演じるときもあるし!」
「そうか?しっかり名が体 を表してていいと思うけどな」
なんか、ヤな言い方だな。
「お前こそ真矢ってなんでだ。ふつう男ならシンヤだろ?なんでマヤなんだ?」
「おばあちゃんが南米の人なんだ」
「え?マヤ文明てことか?でも、そんな風には見えないな」
どう見ても、目元涼しい純日本人顔だ。
「もちろんウソだ」
「んぐっっ。じゃ、なんでだ」
「ああ…まぁ、制作上の都合ってヤツだ」
「なんだよ、制作上の都合って」
「わかる人にはわかる、小学生レベルの言葉遊びだよ」
「なんだそれ……」
そして制作ってなんだ。
「さらに言うと、有家川は初め『柳』って名字で設定されてたらしいぞ?」
「は?だから制作とか設定って何なんだ」
「『やなの!とかいいながらも喘ぐヤツ』=柳っていう、世間の柳さんに大変失礼な意味合いで設定してたらしいけど、あっ『小柳』と微妙にカブってるやん!なんてことに後から気付いて変えたそうだ」
「誰だ小柳って。っていうか、オレは柳じゃねぇ」
「ところでサヤちゃんのお母さんが心配してたよ。サヤちゃんの部屋から艶かしい気配がするのに、ゴミ捨てるときにティッシュばかりでそれっぽいゴミが全然出てないって」
「は?」
「その艶かしい空気を作り出してるとおぼしき女の子の靴も玄関にはないし、もしかしたら避妊の必要の無いような幼女を連れ込んでるんじゃないかって。だから靴も隠して……」
「んなわけねーだろ!気持ち悪ぃ想像してんじゃねぇよ。つか、なんでんなこと知ってんだ」
「うん。まだ俺はお母さんに会った事ないから本当は知らないハズなんだけどね。進行上の都合ってヤツ?先出しだよ」
「なんだ先出しって」
「中出しと違って、入口にブッカケすることかな…なんて思った?」
「おもわないっっっ!」
桐田の言うことはさっぱりわからない。
とりあえず『有家川っていい名前だよな』と、誉められたことだけわかった。
桐田、余計なことは言わなくていい、なんでもいいからオレをほめろ。
いや、何でもよくないか……。
オレが一番上機嫌になる褒め言葉は
「…………!」
ううっ!ついつい頬がゆるんじまうぜ!
《終》
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