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35-いっっひゃっっ![だから『SAYA』じゃないから]3

「いっっひゃっっ!」 膝枕で甘えていたオレの頬を、不機嫌顔の真矢に両手でぎゅっと引っ張られてしまった………。 「ウケガ ワマサヤ!!!」 「はひっっ!」 「ひどい……」 「えっ?ごめっっ……えっっっ?」 引っ張ってた頬を放すと、軽くペチンと叩かれた。 真矢がちょっぴり怒っている。 うっっ……これは、もっと早くに言うべきだったんだろうか。 「俺が『サヤちゃん』って呼んでるのを、ずっと『書き間違えなのにな』と思って聞いてたのか?」 「う……ご、ごめん」 今度は両の手のひらで頬を挟んでムニムニとランダムに動かされる。 うう……変な顔だろな、オレ。 「違うから」 「ひがうっ??なにぎゃ?」 頬をムニムニされてるせいでマトモにしゃべれない。 「俺が呼んでたのは、書き間違えの『SAYA』じゃないから」 「ふえ?」 でも、アレは書き間違えなんだけど。 なんで?という目で真矢を見ると、はぁ……と深くため息をつかれてしまった。 「だから、俺は愛称のつもり。ウケガワ マ『サヤ』のサヤだよ」 「…………………ああああ!」 そうか、そうだ! なんでSEIYAをSAYAなんて書き間違えたのかと思ったら、そういうコトだったのか! 「すごいな!真矢!!」 「何が『すごいな』だよ。自分の名前なんだから、普通すぐ気付くだろ?逆に『何の関係もない書き間違え』って思えるサヤちゃんがすごいよ」 呆れられてしまったけど、嬉しくなったオレは手を伸ばして真矢の頭をワシャワシャとかき乱した。 どうやらオレは、ネットの名前で真矢に呼び続けられるのを、自分で思ってたよりずっと寂しく感じてたみたいだ。 それが実は、ずーっと本名に『ちゃん』付けで呼ばれてたんだって知って、嬉しくって嬉しくって、溶け出すんじゃないかってくらい顔がニンマリしてしまう。 「真矢ぁぁぁ……。呼んで?いつもみたいに呼んで?」 トロントロンに甘えきった声を出すオレに、真矢がしょうがないなと笑う。 「書き間違いなんかじゃないよ。聖夜(まさや)。俺の大好きなサヤちゃん」 「もう一回」 「サヤちゃん。サヤちゃん……。ああもう……可愛いなぁ」 太ももの上のオレの顔がぐっと引き寄せられ、チュ……とくすぐったいくらい軽いキス。 「真矢……もう一回」 「サヤちゃん、俺のサヤちゃん」 チュ……チュ……繰り返される可愛らしいキスにたまらなくなる。 「はぁ…ん……」 唇の先端が甘く痺れた。 「こういうキスでも声が出るって……」 「ん……だって…。真矢が甘い……」 「サヤちゃんは……頭の回転が少し甘いなぁ……」 「はぁっっ????」 「ん……ごめん、ごめん」 誤摩化すように深くキスをされた。 でも、ま、しょうがないので誤摩化されてやる。 「ん…あぁ…はぁ…。真矢……真矢……」 合わせた唇の間から、大好きな人を呼ぶ。 愛情を込めて名前を呼んでもらった分、全部、真矢にも返してあげたい。 オレがひとりで喘ぎを練習したときも、この部屋の天井を見上げながら、知らないまま真矢の声に喘がされてた。 そして今もこうやって天井を見上げながら、バカみたいに真矢に喘がされてる。 今は天井とオレの間に真矢がいるんだ。 そんなささやかなことに胸がいっぱいになった。 「はぁ……やっぱりその喘ぎ声……ズクンと来る」 キスの合間に真矢の指がちょんちょんと唇にふれる。 「真矢だけだ」 「なにが、俺だけ?」 「オレにこんな声出させるの……真矢だけだから」 「…………はぁ」 真矢が深くため息をついた。 「や、ホントだぞ?ホントに真矢だけだから。こうなる前に喘ぎの練習してた時もずっと真矢が()ってた声を聞きながらだったし、今だって……」 真矢が頭を抱えて天を仰ぐ。 「ああ、もう!サヤちゃんが可愛すぎて頭おかしくなりそうだ!」 そうしてまた、脳が溶けそうなキスをされて、オレは震える声を漏らす。 はぁ……ぁ……ん……。間違いない。 キスしただけで、こんな風にオレを喘がせることができるのは真矢だけだ……。 真矢とオレはふれれば響きあうように、お互いを高め合える存在だ。 ちょっとズレてるとこもあるけど、だからこそ面白い。 相手のことを知る喜びがある。 だからもっと。 この先もずっと。 その唇でオレの声帯を震わせてくれよ。真矢。 《終》

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