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25-むうぅぅ?[ホントにホント?]

ヤりたい盛りの十代男子が二人そろえば、二戦目どころか三戦、四戦……。 なんて事もなく。 優しく真っ当な感覚の持ち主らしい真矢が、初めて男を受け入れたオレを気遣ってくれてしまった。 オレも身体の心配をされたら素直に従うしかない。 『もう、後のことなんか気にせずに、めちゃくちゃになるまで抱いてくれよ!』 心の中ではそんな事を叫びまくってたけどな! ………本当はオレの心の叫び、ちょっとは聞こえてただろ、真矢? しばらく裸でいちゃいちゃしたあと、軽く片付けをし、下着を身に着けベッドに座ってまたいちゃいちゃ。 さすがの真矢もこの期に及んでゲームのセリフの練習をしようとは言い出さなかった。 ……よかった。 けど、ちょっと気になることがある。 ……………真矢、随分手慣れてたカンジがするんだけど。 いや、オレだって男相手は初めてってだけで、まったくの初体験ってわけじゃない。 もちろん遊びまくったりはしてないけどな。 だから真矢が手慣れてたとしたって、どうこう言えた義理じゃない。 でも、浮いた噂なんか聞いた事もない真矢が、なんであんな慣れてんだって気になってしまうのはしょうがないだろ? これまで学校じゃそこまで親しかったわけでもないし、二人で話す時以外の真矢は極端に無口だからオレが知らなかっただけなんだろうけど。 オレの完全な意味での初体験が真矢だったら良かったな……。 なんて、乙女ちっくな後悔をしてしまったりするあたり、オレの真矢へのハマりっぷりはかなりのもんだと自覚している。 けど、過去に嫉妬するなんて……良くない執着だな。 はぁ……。 「どうした?何考えてる?」 軽くため息を漏らしてしまったオレの髪を、くしゃりと真矢がなでた。 「ん……何でもない」 切れ長の目がオレの顔を覗き込んでくる。 『何でもないわけないだろ?』 視線だけで伝わる。 それだけ真矢との関係が深まったんだって実感した。 今ならオレのくだらない嫉妬も、ただ甘えてるだけだって、優しく受け止めてくれそうな気がする。 隣に座る真矢の腰にまわした腕にきゅっと力を入れて、肩にコトンと頭をもたれかける。 「真矢……慣れてた」 真矢は何かを考えるように目線をちょろっと上方にやって、再びオレの顔を覗き込んだ。 「それは……気持ち良かったってこと?」 「は?えっっ?????いや、そうだけど。気持ちよかったけどっっ」 「そう、良かった」 いや『良かった。』じゃねぇよ。 なんだそのにっこり笑顔は。 いくらオレが単純でもそんなことで誤摩化されたりは……。 「けど、俺がなれてるわけじゃなくって、サヤちゃんの感度が抜群にいいんだよ。……というか、サヤちゃん本当に男初めてなんだよな?」 「はぁっっ!? あたりまえだろっ!なんで……そんな」 この期に及んでまだそんな事を言われるとは思ってもみなかった。 「もしかして、俺のこと気遣って演技してた?」 「な……してねぇよっ!……そんな余裕ねぇし」 「そうなんだ!」 さらに真矢がにっこり笑顔になる。 なんなんだ、ほんとに。 「俺もそれなりに下調べはしていたけど、まさか初めてなのにあんなに良がってくれるとは思わなくて。もしかしたら、やっぱりかなり経験積んでるのかなとか、演技だったのかなとか、色々頭をよぎってたんだ。はぁ……良かった」 いや、だから『良かった』じゃねぇよ。 「真矢はどうなんだよ」 「俺?うん、もちろんすごく気持ちよかったよ。本当、最高に幸せだ」 「いや、そうじゃなくてっっっっ」 『気持ちよかったよ』と言われ、ちょっと嬉しかったりもするけど……でも、そうじゃなくて。 「なんか、すげぇ手慣れてた。キ、キスもなんかすごい上手いし。真矢は……あるのか?」 「え?俺、キス上手い?」 「メチャ上手いだろ」 「そっか……。嬉しい」 そう言って、ちゅ……っと、キスをして……。 だから、そうじゃなくて! 「いや、問題はそっちじゃなくて。だから、真矢がキスもエッチも手慣れてるから……その、男の経験とかあったりするのか?」 「男の経験?あるわけない」 「ホントに?だってあんなに……」 「だから、さっき言った通り、それなりに男同士でのセックスに関して調べたし、それ以前に、サヤちゃんと通話してかなり濃厚濃密にイメトレさせてもらってたから」 男臭い表情でニッと目を細める。 「それに加えて…だから、俺が上手いんじゃなくてサヤちゃんがエロ……いや、えーっと、そう、感度がいいのに助けられたんだよ」 「…………」 いま、オレがエロいだけだって言いかけたよな。 でも、いつの間にかゴムつけてたりとか、そう言う手順もかなり慣れてるカンジがしたんだけどなぁ……。 「それに、なれるもなにも、そもそも俺、初めてだし」 「………は?」 「もちろん、キスもサヤちゃんとしたのが初めてだ」 「……え?」 えーっと。頭が混乱してきた。 いや、混乱するような事じゃない……けど……。え? 「だから、最初はキツい思いさせるんじゃないかなって心配してたんだけど。あんまり反応がいいんで、無理して演技してるんじゃないかなって心配になってた」 「んなこと、してねーって……」 「……そう言ってくれて、うれしいけど。ほんとに初めて?」 「っっしつこいっ!こんな……ふうになったのは真矢のせいだろっっ!」 「俺のせい?」 「真矢が電話であんなっ……イロイロ…させるから」 ちょっと記憶をたどるように視線を泳がせて、またニッと目を細める。 「俺が色々させたんじゃなくって、サヤちゃんがどういう風するのが好きなのかを聞いてただけだよ」 うそばっかりっ! 「『指をねじるようにまわしながら気持ちイイとこ刺激してみて』とか『内側から入口のとこ指先でいじって』とかめっちゃ具体的に指示してたっっ!」 「なるほど。とっさに思い出すってことは、印象に残るほどソレが気持ち良かったってこと?」 「……う。ち、ちが。だからそんな、イロイロさせるからっ」 「色々して、すっかり開発できてたから、初めてでもあそこまで気持ち良くなれたのか。うん。良かった。俺もサヤちゃんがどうされるのが好きかわかった上で挑めたし。備えあれば憂いなし?継続は力なりかな?……いや、好きこそ物の上手なれだな」 優しく肩をなでながら、頬を寄せる。 う……。 なんだろう……。なんか、エロい話をいい話っぽくまとめようとしてないか? 気のせい? 「結局それって……」 「うん。サヤちゃんが身体をエロく開発してくれてたおかげで、つたない俺でも役に立てたようで良かったよ」 「んがっ……なんだそれっっ!」 「よかった、よかった」 なだめるようにぽんぽんとオレの肩を叩いて笑う。 『好きこそ物の上手なれ』とか、なんかオレがスゲェ好き者みたいじゃね? ただオレがスケベなだけってことにされてしまったけど、これ以上反論しても、さらに恥ずかしい事を言わされて、適当に丸め込まれてしまうだけだろうな。 「……あっ、しまった!」 「えっっ?」 真矢が急にバッと身体ごとオレに向き直る。 「思いがけずこんな事になったから、順序がおかしくなってしまったけど、俺、サヤちゃんに言わなきゃいけな事があったんだ」 思いがけずこんな事……。 まあ、真矢にとってはそうだろうけど。 言わなきゃいけない事ってなんだ。 急に改まって話しだした真矢に、ちょっと不安になる。 何を言う気だ。 そう思ってドキドキしていたのに、真矢はサッと立ち上がって綿パンをはいて、メガネをかけ、またオレに向き直る。 ……ほんとに、なんなんだ一体。

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