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第5話 二人の想い

 「じゃあ、同時に」  「斗陽、愛してます」  「睦人、愛してる」  お互いに目が合って、一瞬止まった。そして見つめ合ったまま二人同時に話しだした。  「僕は、今日が記念日だから一緒に過ごしたかったの」  「俺は、明後日の記念日にお前に伝えたいことがあって」  「「え?」」  二人の声が重なる。  「明後日?」  「今日?」  「だって、今日は僕が斗陽に好きだと言われた日……」  「え?お前が俺の事を好きだと言葉にしてくれた日は明後日…」  くすぐったいような気持ちが二人の間に流れていく。  「斗陽が怒っていると思って悲しくて……」  「俺は…まあいいか。睦人、今まで十年間ありがとう。そして、これからもずっと一緒にいて欲しい。手、出して」  「……これ?」  「うん、寝てるときにそっとサイズ測らせてもらった。指輪なんて恥ずかしいけれど、これ二つ合わせると四つ葉の形が見えるんだ」  「内側に四つ葉が……でも今日で良いいの?」  「記念日なんていつでも良い、睦人が俺の隣で笑っていることが何より大切」  「……どうしよう。嬉しくて、泣いてしましいそう」  「その顔、あの時と同じだ」  「え?」  「少しはにかんで、今にも泣きそうなその顔。十年前のあの日と同じ」  「将来の約束なんて斗陽からもらえるなんて思いもしなかったから、嬉しくて泣きそう。まさかこんな形で斗陽から指輪をもらえるなんて」  「俺にもくれる?」     「何も……用意してないんだけれど」  「俺だけに見せる顔、見せてよ」  「……ぅん」  ほんの少しのすれ違い。ほんの少し言葉が足りなかっただけ。重ね合わせた肌が、お互いの気持ちを伝える。触れあったところから広がる熱は、麻薬のように身体中を駆け巡る。  「斗陽、あ……なんか今日、変……」  「変じゃないよ、溶けそうなその顔。俺しか知らない。誰にも見せたくない、これからもずっと……」 「これから……も?……ずっ…と?」  二人で漂い、たどり着く先はどこなのだろう。未来はいつも不安定だ。しかし、たとえどこに流れ着こうともお互いがいれば、怖くない。きっと明日も二人で笑っていられる。  「そう、ずっと、永遠に。もっと見せて、俺の一番好きな顔」  時が流れても、二人でいることの意味は十年前から変わらない。そしてこれからも。互いが相手を思いあえれば。

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