25 / 32

第25話※

 千歳がいなくなったのを確認すると、優弥は脱衣場で服を脱ぎ浴室へと入った。  自分の家とは違う浴室に、ただシャワーを浴びるだけなのに必要以上に緊張する。  家族が留守の恋人の家でシャワーを浴びるなんて、いまさらながらにこれからの展開を想像して恥ずかしくなる。  今まで千歳とは、学園内でしかしたことがなかったし、運動部でもない二人がシャワーなんて使うこともなかった。  そのせいか、制服だって二人して全部脱ぐことはほとんどなかったのだ。 (俺……本当に高瀬と恋人同士になれたんだ。こういう時ってどうしたらいいんだろう。制服、着直した方がいいのかな? それともタオルだけ巻く?)  シャワーの温度を調整しながら、優弥はそんなことを考えていた。  初めての経験に、優弥は完全にバージンと化してしまっていた。 (だって、高瀬とちゃんと恋人として抱き合うのは今日が初めてだから……)  そう考えると、なんだか優弥は恥ずかしさで全身が熱くなる気がした。  顔と身体の熱を冷ますために、少し温めのシャワーを頭から被っていると、脱衣場に人の気配を感じた。  きっと、千歳がタオルを持ってきたのだろう。  そう思ってあまり気にしていなかった優弥だったが……。 「優弥、タオル置いといたから」  言いながら浴室のドアを開けた千歳も全裸になっているのを見た瞬間、優弥は慌ててしまった。  きっと顔は真っ赤になっているに違いない。  なぜなら、こうしてまともに千歳の裸を見るのも優弥は初めてだったからだ。 「た、高瀬っ!」 「俺もシャワー、使おうと思って。優弥の家に比べたら、あれだけど……俺の家だって二人で入っても充分な余裕あるでしょ?」 (浴室に余裕があるないの問題じゃない!)  それどころか、優弥の気持ちには余裕なんてまったくなかった。  そんな優弥の気持ちも知らずに、千歳はさっさとシャワーを浴びる準備をしている。  入り口側を千歳に塞がれてしまい、仕方なく、優弥は千歳に背中を向けてボディソープで身体を洗い始めた。  後ろから千歳の視線を感じるが、優弥は恥ずかしくて振り返ることが出来なかった。 「…………」  お互いに無言で、身体を洗う音が浴室内に響く。  自分の胸の鼓動が千歳に聞こえるんじゃないかと心配するほど、優弥の緊張は高まっていく。  すると、後ろで千歳がシャワーを使う音が聞こえ、その水音に優弥が少しホッとした時だった。 「うわっ!」  いきなり背中にシャワーのお湯をかけられて、優弥は驚いて千歳の方へと振り返ってしまった。 「優弥、緊張しすぎ」  そこには、笑いながらシャワーのお湯を優弥へと向ける千歳がいた。 「だ、だって、お前が……!」  シャワーのお湯を止めた千歳が、優弥の言葉を遮るようにいきなり密着してきた。  そして、少し屈むように優弥の耳元へと口を寄せると囁く。 「だから俺が、ほぐしてあげる」

ともだちにシェアしよう!