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ドット、アット

「わ…そっか」  バスルームのドアを開け、その光景に驚き、思い出す。  永久は彼の飼い猫を、一時的にバスルームに幽閉していたのだ。温かそうなブランケットに包まれて、アオは…寝ているのだろうか?そっと手を伸ばしても、ひげすらぴくりとも動かない。慎重にブランケットごと彼女を抱き上げて、救出する。  改めて脱衣所兼洗面所のカーテンを閉め、バスルームのドアを開けた。  ガコ…力づくでないと、閉まらない。  シャワーを捻り、温度を高めにする。身体を洗い流し、しばらくお湯を浴びて…決心して、そこに指を入れた。 「ん…」  永久の出したものが入っている、場所。  脈を持っているような鈍い痛みが、さっきから続いている。  指よりずっと太い物を呑み込んでいたなんて、信じられない気分だ。掻き出すように指を動かすと、どろり、と手のひらを伝い、ぽた、床に落ちた。シャワーのヘッドを動かして、それを流す。あとどれくらい入っているのか想像もできいないので、あてずっぽうで、さらに何度か掻き出す動作をした。  くちゅっ、指のすべる、音がするから。ものすごく、恥ずかしい。  熱いお湯で洗い流して、逃げるようにバスルームを出た。  簡単にバスタオルで身体を拭いて、それを巻きつける。服を持ってくるのを忘れた。  カーテンに手を掛けながら、ふと、鏡の中の自分と目が合う。そう、この洗面台の鏡は釘で引っ掛けてあるだけなので、取り外しができそうだなと思っていたんだ。注意して掴み、動かすと、あっさり壁から外れた。  ――だって。  あんなふうに言われたら、気にならないほうがおかしい。自分の知らない、チャームポイント。あの姿勢から相手にしか見えないのであれば、自分で見るには、鏡を頼るしかない。  やはり決心までには少し時間がかかったが、碧は床に置いた鏡に跨った。自分でそこを広げて、鏡を覗きこむ。 「…ほんとだ」  入り口の、少し横に、ほくろが一つ。  その鏡の中のほくろに、ぽたっ…掻き出しきれなかった白濁が、落ちて。 「碧、交代…何やってんの」  シャッ、カーテンがスライドし、頭上から永久の声。  いっそ気を失ってしまいたい。

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