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No. 7

ストーブはとうに消えていた。 「庭に沈丁花があるんですね」 薄い胸板を苦しく上下させていた恋人が、舌足らずに言う。 少し驚いた私にふふっと笑いかけると、彼は肩から毛布を落とした。 「誘われているみたい」 サッシの換気口から届く甘い匂い。うっそりと宙へ手を伸ばして泳ぐ真似をする彼を追いかけ、駄目だと絡め取れば、若い恋人の身体はまた熟れ始める。 「好きです、先生」 それが思い違いでも、私は構わない。

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