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No.8 君との約束

両手で、そっと包み込む。 いつの間にか皺の増えた指に、唇を寄せた。 ずいぶんとロマンチックな挨拶だなって? いいじゃないか、最後くらい。 こうしていると初めて手を繋いだ日を思い出すよ。ほら、離すことはなかっただろう?今だって、そう。でも―― 「今だ」 暖かな追い風が吹き抜けた。開いた掌から舞い上がった君は、笑ったかのようにきらりと瞬き、彼方へと去っていく。 きっとすぐに追いつくさ。そのときまで、さよなら。

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