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10 | yuzu side
「で?昨日どうだった?あのあと」
中学の頃に仲良くなり、それからなんだかんだと気が合って高校も腐れ縁で同じになってしまった男が机に肘をついてニヤニヤしながらこちらを伺ってきた。
相変わらず下品な笑い方がよく似合う奴だ。
「おかげさまで。しっかり仲良くさせてもらいましたけど」
「ヤッたの?」
「ヤッた」
男が短く口笛を吹いて、手を叩いた。
「あーあ、可哀想に。純希くん、だっけ?ありゃ、だいぶお前に幻想抱いてたぜ。ショックで泣いたんじゃねーの?」
「さあ。どうだろうな」
「なんだよ、教えろよ。協力してやっただろ」
「は?普段俺がお前にどんだけ世話焼いてやってるのか忘れたのか?」
そう言ってやると男は、態とらしく肩を竦めて、俺から目を逸らした。
「はいはい、そうですよね。大変お世話になっておりますよ、隊長サマ」
相変わらず軽い口調のそいつはこの学校で最も人気の高い生徒会長サマ。
そして、俺はその生徒会長サマの親衛隊を束ねるまとめ役、隊長サマだ。
1年生の時に、早速人気者になったこいつにはすぐに親衛隊だなんてしょーもないものができた。まとめる人間が居ないと統制が取れないと言われ、こいつに全く興味のない俺が抜擢された。
ふざけんな、そんな面倒くさいことをこの俺がするわけねえだろ、と一蹴したのにこいつときたら
「俺の親衛隊だって周りに認識されてたら、お前のこと可愛いっつって近寄ってくる奴減るんじゃねーの?お互いにウィンウィンじゃね?」
と言ってきたのだ。
俺は自分で言うのもなんだが、かなり可愛い顔をしている。ズボンを履いているというのに、何度女に間違われたか数えきれない。
だからか、俺に近寄ってくる奴はみんな総じて俺を抱きたいとトチ狂ったことを言ってくるわけだが、俺のチンコより小せえやつに掘られるなんてありえねえし、そもそも俺のより大きくたって掘らせる気はさらさらない。
そんなわけで、この高校に入ってから激増した野郎からのアプローチにかなりウンザリしていた俺は仕方なくあいつの話に乗ったのだ。
「それにしても、こんな可愛い顔した奴が巨根のバリタチなんて、俺だったら失神してるね」
「安心しろ。お前なんか抱く気も起きねえから」
「俺だってお前なんかヤだよ。こんな表裏あり過ぎる奴。純希くんはまだ柚の表の顔しか知らねーんだろ?」
「あいつは可愛い俺の方が好きみたいだからな」
「はー、怖。裏の顔知ったらどんな顔するんだろうな。つーか、いつまでその可愛い僕っ子柚さんで行く気だよ」
「純希が望むならいつまでも」
「…はあ?なんだそれ。お前そんなキャラじゃねえだろ」
生徒会長サマが呆れたように言うが、そんなキャラがなんだと言われても仕方ない。純希が望むならいつまでも、言葉通りそのままの意味だ。
純希の為ならいつまでだって猫を被り続けられる。
かわいい、かわいい俺の純希。
必死に俺にしがみついて喘ぐ姿を思い出し、自然と笑みが零れた。
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