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酷いこと、したい。

 背中が白く、浮いて見える。  黒い部屋の中で、別段白くない背中がくねりながら着衣を脱ぐ。  それを後ろから見ながら欲情する。  無防備な背中は、晴人(はると)がいることに気がついていないのかもしれない。  そういえば、帰宅の挨拶をしただろうか。  扉を開いたときに一史(かずし)はお帰りと声を返しただろうか。覚えてない。覚えてないが、目の前の光景が焼き付いて、胸に灯をともす。  一史の体が目の前でむき出しになってる。寝巻き替わりのスウェットを頭から脱いでいく。滑らかな背中が悶えるように揺れる。  正座して座った腰の横には、黒い大振りな数珠が連なったような玩具。それもひとつではない。イボの付いたバイブ、プラグ、クリアピンクのエネマグラ、ぺぺのローションボトルは半分ほどに減っている。  よくこんなものを自分に隠しておけるものだと思う。  いくら帰りが遅いとは言えど、お互い同じ生活空間を共有していて、晴人の目が届かない場所などよほど探さなければない。  いや、そんな場所は探しても無いのだ。  だから、晴人は押し入れに隠されたネットショップの箱に一史の性癖を見つけたし、それが確実に増え(あるいは使用の証拠のように減っ)ていたのに気がついてた。  それでも、軽蔑より先に興奮を覚えたのは。一史の傾倒した性癖にいっそ付き合わせてくれたらいいと思うのは。  「一史」  びくと、跳ねるその背中に噛みつきたいからだ。  「手伝ってやろーか」  振り返って赤面して青ざめた顔を涙と鼻水まみれにしたいからだ。  秘密を暴くために容赦なく部屋に入り込んで自ら脱いですでに上裸だった体を布団の上に押し倒す。急なことに驚いたのか抵抗はない。  ただ、唖然とした目で見上げてくる。  こくと小さく唾液を飲んだのが幼くて煽られる。  薄い布団。掛け布団は取り払われ、代わりにペットのトイレ用シートが引いてある。正座した足の下に見えた薄水色のものはつまり、これだったらしい。  剥き出しの乳首に舌を這わせる。舌の平で、米粒程度の突起を押し潰して、舐め上げる。  ひくん、と一史の体が反射的に戦く。乳輪の大きめな乳首は縁に沿って小さく毛穴をたたせている。  その一つ一つに唾液を含ませるように舌で覆った。  「ンんんっ」  鼻に掛かった声は身じろいだ拍子に洩れたようだった。  乳頭を強く舌で押すと乳輪にめり込む。押し込んで細かく、強く揺すってやる。乳輪の奥でしこった乳首が舌になぶられて逃げる。逃げる先を捕らえて歯で抉る。  ちゅぷちゅぷちゅぷ、かり、こりり。  転がすと乳頭は熱帯びて膨らむ。膨らんだてっぺんを前歯でカリカリと引っ掻いた。  「イっ!」  小さくて乱暴にすれば千切れてしまいそうだ。でも、だから、乱暴にしたい。この欲求がどこから来るか知らない。知らないが、ベトベトに泣かせて、顔中、涙と涎とちょっと黄色がかった白いのでぐちゃぐちゃにした口に自分のチンポ突っ込んでやりたい。  「や、だ」  ひくひくと腰が震えた。逃げようと布団の上をもがいた両手首を捕らえて、押し付けて前歯で、左の乳首を細かく齧った。  鳥肌がたっていた。  「晴、さん、俺、チンコが、」  吐息が熱いものに変わってる。  ちゅるると、押し込んだ乳首の薄い皮が伸びるくらいに吸った。  「ンぅっ」  今度は明らかな喘ぎが一史の鼻から洩れた。  ちゅぽんと音を立てて解放すると腫れたように赤く勃起した乳首が唾液にてかてかしながら震えてた。胸を押さえ込んで、親指でまた、乳首を潰す。爪の先で引っ掻けて弾く。親指と人差し指で摘まんで、くりくりと捏ねる。左の勃起に釣られた右乳首がきゅうと小さく収縮して、嬲られるのを待っていた。  「チンポが、どうしたって」  「ンくっ」  舌を突きだし、右乳首の乳輪を辿る。触れるか、触れないか。微妙なタッチに無意識なのか胸を押し付けてくる。嫌がるよりも誘ってくる身体にどれだけ快楽狂なのか不安になる。  こんなに好き者なら、俺以外にも簡単にこの躯を触らせそうで。  「痛っ!」  がりと、自分でも考えて居なかったくらい強い力で噛んでいた。一史は躯を震わせる。ビクビクと馬乗りになった下で腰が跳ねた。  噛みついた乳首が呼吸に合わせて上下する。  ふー、ふーと鼻から堪えた息が荒い。  「乳首だけで射精(イッ)た?」  赤い頬が一層赤くなる。  感情の抑揚を押さえて顔を見た。  呼吸を繰り返しながら解放された腕が顔を隠す。  「ンぅっ!」  がら空きで無防備な乳首を引っ掻く。  「なあ、乳首だけで射精(イッ)ちゃったの」  「ヒ、ン、んっ」  かりかりかり……  連続して細かく乳頭を引っ掻くとそれだけで一史の躯がビクビクと跳ねた。射精後の敏感な躯に触れられるとそこかもぞ痒くて股間に熱が集中する。個人の程度で差があれど、それくらい同じ男ならわかる。  「乳首だけで射精()けるなんて自分でも弄ってんだろ」  ひくと一史の肩が跳ねた。  重ねた腕の下で高揚する肌が見えた。  「言えよ」  「ン、くっ」  弾いた爪の先が膨らんで充血した乳首に当たる。ピシッと小さく音がする。指の先端で円を描くとその円に合わせて乳首も円を描く。滑稽だが堪らなく愛おしい。  「……する、」  「聞こえない」  「ンぅぅ……」  囁く微かな声は聞こえないほどのものじゃない。本当は聞こえてる。  聞こえているけど、苛めたい。  羞恥しながら感じきってる声をもっと聞きたい。  「はゥっ……!」  再びきゅっと摘まみ上げると一史の腰が引けた。ピッチリ閉じた腿を割ってスウェットの上から股間をまさぐった。  「ぅあ……」  右乳首を抓って擦るようにすると、股間がひくひくしているのがわかる。掌に柔い、たわんだ皮膚に包まれた球体が触れた。  「はる、さ、それ……」  「こりこりしてるな」  「んんっ……」  緩いスウェットの上から脱力して緩んだ睾丸をたふたふと柔く揉む。耐えるように唇を閉めたままで「ん、ん、」と小さく、断続的に声を出す。  「乳首引っ掻かれると、ここも気持ちいいだろ」  「ふぁっ」  睾丸の根本、服の上からでもわかる、ひくひくと震えるずぼまりの前辺りに指を置く。そのままゆるゆると押し込むと結ばれていた唇が解けて甘い溜め息が洩れた。  「気持ちよくて、射精(イッ)た?腹の奥で感じた?」  「感、じた、感じた、俺……」  素直に吐き出した声が愛おしくて嗜虐心を煽る。愛おしいのに苛めたい。可愛くて仕方ないのに泣かせたい。   「乳首、噛まれんの、気持ちい……」  「ふぅん」  白状したような、ねだるような声が耳に甘い。  ガリ。  「いぃっ!」  一際高く上がった声。噛みついた乳首に身を捩る。  酷くしたい。痛め付けたい。  犯したい。

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