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「………………」
それまでグダグダと駄々を捏ねていた静史だったが、俺の言葉に突然何も喋らなくなった。顔を見ることができない為どんな表情をしているのか分からないが、諦めてくれたと取ればいいのだろうか。
これで、静史との関係も、終わり――…
「……分かったら、どけよ」
静かに伝えると、頭上からボソボソとつぶやく声が聞こえた。
「……だけなのに………」
「……え…?」
「……こんなことになるんならあんな女、手出すんじゃなかった……」
「…ッ!?」
グッと大きな手で後頭部を抑えつけられ、腹の近くに手を差し込んで乱暴にベルトが外された。何事かと狼狽えているとさらにズボンが脱がされ、静史のやろうとしていることを察してしまう。
「やめ、ろ!!んなことしたら、強姦罪で訴えるぞ…!」
「………」
静史は渾身の力で暴れる俺の言葉に耳も貸さず、最後の砦であるボクサーパンツにまで手をかけズボン同様躊躇いもなく脱がした。
想像するのも嫌だが現在の俺は上半身はしっかりジャケットまで着込んでいるのに、下は靴下のみであとは全て曝け出しているという哀れな姿だ。
カチャカチャと静史が自らのベルトを外す音が聞こえ、俺はサァーと青ざめた。
こんな状態で正気か?
「静史…!やめろ!」
「……京太、俺と別れない?」
やっと聞こえた声はとても低く感情が読み取れない。泣きそうにも聞こえるし怒っているようにも聞こえる。そのどちらであっても俺には理解ができない。
「別れるって言ってんだろ…!」
脅しのような言葉に屈する訳にも行かず、強い口調で放った言葉を引き金に、ケツに覚えのある熱いモノが充てがわれた。慣らされることなくズズズ…と侵入してくる硬い物体に、痛みで喉が引き攣る。
「ひっ、ぐ…そんな、いきなり…無理!!」
「…無理じゃないだろ。いっつもヤってたんだから、だいぶ柔らかい」
「んなこと言って、も…痛いって…!!イッ」
「そんな締めるな。締めなくたって抜く気無いから」
「やだっ…無理無理無理!裂ける…うあッ!」
「……なあ、京太。なんであんな女の方がいいんだ?全然美人でも無いし、俺の顔に釣られるバカっぽい女だし、そもそも京太にはあんなの釣り合わない」
「ヒッ…あ、あっ、く」
掴むところも無く俺は冷たい床の上で拳を握り締める。無遠慮に入り込んでくる痛みに唇を噛みしめなんとか我慢するが、こんな酷いこと静史から一度もされたことのなかった俺は動揺を隠し切れない。
いつも静史とのセックスは普通だ。
普通というと刺激が無いのかつまらないのかと思うかも知れないがそういうわけでは無く、俺を一番に優先して、尽くして、毎回気持ち良くしてくれるから静史とのセックスは好きだった。
だから普通というのは、アブノーマルなことをするわけでは無く一般的なプレイが多いとかそういう話なのだが、こんな慣らしもせず無理矢理事に及ぶような性急なことをされたのは初めてで頭が真っ白になる。
確かに静史の言うとおり付き合い出してからは、残業続きでヘトヘトでない限りほぼ毎晩のようにヤっていた。その為男を知らなかった頃よりはだいぶ柔らかくはなっていると思うがそれにしたって痛いものは痛い。女のように濡れるわけではないのだ。
「痛い?大丈夫?苦しくない?」と普段なら聞いてきてくれる筈なのに、静史は訳のわからない事を言うだけ。その様子に恐怖さえ感じる。
「お願っ…ほんと、抜いて…!」
「京太、女じゃお前のこと満足させてやれないよ。もう後ろ知っちゃったら戻れないだろ?」
「アッ…!」
俺の下半身と静史の腰が密着して、根元まで飲み込んだことに気付く。奥まで到達した静史は俺の一番気持ちいい場所をよく知っていて外すことなく的確に擦ってくる。痛い筈なのに、慣れ親しんだ快感に腰が浮いた。
「そう、そうやってもっと腰上げてろよ。京太の気持ちいいとこ知ってるの俺だけだよ。…それに女の指じゃこんなとこ届かない。後ろも触って、なんて女におねだりできる?お前」
「はっ、意味わかんな…もう、やだって…!動くな…ンン!」
腰を密着させたまま深く押し込まれる感覚に背筋にビリビリと強い刺激が走った。
その刺激に今まで萎えていた自身がゆっくりと顔をもたげる。
こいつ、俺が奥好きなの知っててわざとやってるんだ。
しかも悔しいことに、静史が俺の状態にすぐに気付き上から小さく笑い声が降り注いだ。
「俺に無理矢理されてるのに、感じてるんだ?実はこういうの好き?ごめんな、気付いてやれなくて」
「うっ、い、や…違っ…」
「何も違わないだろ!!」
「アァッ…ッ!」
静史のが抜けそうな程引き抜かれ、すぐに奥まで打ち付けてくる衝撃に甘い声が上がってしまう。
体が覚えてしまっているんだ。
静史との気持ちいいセックスを。
どこに当たれば自分が気持ちよくなれるのか、無意識に良いところに当たるように腰が勝手に動く。…最悪だ。
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