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気持ち悪い……。 電車の中の人の多さに、息を吸うのも嫌になってきた。 香水、食べ物、体臭、話声、気持ち悪い。 警察なんかに呼ばれなかったら、こんなクソみたいな電車に乗らずに済んだのに。 くそう。 手すりに掴まり、――いや、手すりを両手で抱きしめながら、ゲロみたいな電車の中を耐える。 「あの、――大丈夫ですか?」 そんな俺に声をかけてきた奴がいた。 「ああ?」 「気分、悪そうなので、これ」 ひやりとした冷たいものが頬に当たる。 眼鏡をしたクソ真面目そうな、――ブレザーを着た高校生が、俺に冷えたペットボトルを差し出してきた。 「次の駅で皆、乗り換えますかね、それまで耐えて下さいね」 ――爽やかな笑顔。 そこれからずっと傍にいてくれる大切な奴になるとは知らず、俺は行きずりの良い奴の水を静かに飲みだす。 緑の嘘は、――既にもう始まっていたが。

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