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四
「太陽の代わりなんて、この先一生会えません。俺は、貴方だけです。貴方だけですから。太陽」
ただ、俺はもう嘘は付かず、そう本音でぶつかるしかなかった。
これからはもう、嘘をつかないからと、最初から信頼を築くやり直しをと。
「もう二度と会いたくない。さっさとそのブーケごと俺の前から消えてくれ」
言葉は届かなかった。
嘘ではなかったのだが。
本音を吐露したのだが。
「俺を本当に好きだと言うなら、平穏の為に消えてくれ」
両手で顔を覆い、太陽はそう言う。
そこまで拒絶された俺は、からっぽになった心のまま、動けずにいた。
「今から椿と出かけるから、――帰って来るまでに消えといてくれ」
そう言うと、俺の横をすり抜けていく。
掴もうと手を挙げたが、戸惑いと拒絶され臆病になったその手は遅かった。
太陽を捉える事も出来ず、その手は宙を舞った。
足元に降り積もる青い花弁は、まるで俺たちの涙のように小さな海を作っていた。
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