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「その手は?」 太陽の手は、歪な絆創膏だらけだった。 せっかく長くて綺麗な指先なのに。 「ゴム手袋してたら、細かい所が上手く出来ないから」 「椿君に仕事の管理任せっきりだからこうなるんだ。こいつ、もう三日眠ってねーで、今、9時間缶詰めして、終わってない仕事してんだよ」 「親父さん!」 どうやら、太陽はこのおっさんになら何でも話すらしい。 どんな関係か分からねえが、信頼しきっている様子が面白くねぇ。 「俺に花束なんざ送ってる場合じゃなかったんじゃない?」 「……うるせぇ。だから、苦渋の選択でお前を呼んだんだ」 「ああ。すっげえ期待して来たよ」 眼に止まった救急箱から、包帯を取り出して、軟膏を塗って絆創膏を貼り直し、包帯を指一本一本丁寧に巻いていく。 「お前、上手だな」 「ガキの頃から、傷が絶えない環境だったんでね」 にやりと笑うが太陽は笑い返してくれなかった。 太陽は、三日眠っていないせいで、肌はいつもの白い肌ではなく、青白かったし、目の下に隈もあった。 薄く開いた唇はかさかさで、今すぐ舐めてやりたくなるほど。 それでも、眠っていないから神経が研ぎ澄まされているのだろうか。 花の色合いや、微妙な位置、リボンや包み紙一つにしても、もはやアートのように美しく、思わず息を飲むほどだった。 指先がボロボロになっても構わずに、自分の表現したい形を上手に表して行く。 その出来上がりは、少し寂しい色合いや、少しでも位置がずれると、全て壊れてしまいそうな繊細な形だったりしたが、 まるで太陽の心みたいで。 俺は離したくないと思った。 このまま、その形を壊さないで、この胸に掻き抱き、離さない。 「できた」 最後の花を太陽が包んだ瞬間、そう言った。 空は完全に朝を迎えていて、鳥の声が頭に響いてくるぐらい疲労した空間だったが。 「貸せ。梱包するから」 ソッと手から奪おうと傍へ近づくと、 ストンとそのまま俺の胸の中に太陽が飛び込んできた。 「おい」

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