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「そ……うですか」 寒田はあまり表情を動かさずに、短くそう言う。 そして、少し横にずれると、俺にタクシーを譲った。 「では、先にどうぞ。俺は車で来てますし」 んじゃあ紛らわしく突っ立ってるんじゃねーよ、と思いつつも礼を言うが、澄ました顔のままだった。 俺をライバルだと意識している癖に。 健気にも譲ってくれるとは。 だが、恋愛は譲っていたら本当に逃げられて終わっちまうからな。 無言でお互いを睨みながら、夜の道路を飛ばした。 俺が今何処にいて、どんな状況で、何をしているか。 太陽はそれを考えて躊躇して、それでも俺に電話したんだと思うと、可愛くて堪らなかった。 俺の重くて、歪んだ愛を、注ぎ込んだとしても、 太陽ならば大丈夫なんじゃないかと、そう願ってしまうぐらい。 俺はあいつに惚れていた。 太陽の店に到着すると、空はもう紫色に染まっていた。 明けの明星が頭上で輝いている。 時間は既に四時を過ぎていた。 「遅い!」 店に入るなり、大歓迎ムードでそう言われ肩を竦める。 愁傷に呼び出したことを詫びるつもりもないらしい。 まあ、それぐらい全然問題ねぇし、俺が舌打ちしたいのはそんなことではねぇ。 「誰? このおっさん」 俺以外にも呼んでたのかと、ウキウキした心が冷めてしまった。 二人っきりかと思ったのに。 「親父さんはもう帰って自分の店もしなくちゃいけないし、家族もいるんだ。お前は大丈夫だろ」 「酷えな。俺の恋心は傷だらけだ」 太陽が親父さんと親しげに呼んだ奴は、俺の顔をまじまじと見た後に、『恋心……?』と呟いた。 「ああ。俺、太陽が好きなんだ」 サングラスを外しながらそう言うと、渋い顔をした。 「つまんねー話は良いからさ。花の茎を切ったり、薔薇の刺抜いてり、完成品にリボン付けたり、段ボールに梱包したりとか頼む。分からないことがあれば聞け」

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