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Side:太陽 知らない、苦い匂いがする。 甘くない。 甘い匂いなら好きなのに。 酷く苦くて、俺の楽しくて甘い夢をかき消すような。 気持ちよく眠っている夢の中から、引きずり出されるような。 酷く不快な気分に、渋々片目だけ開ける。 「お、やべ。起きたか」 じゅっと、急いで灰皿に煙草を押しつける音がした。 「おはよう。太陽」 すっかり俺を呼び捨てに呼ぶこいつは、苦い匂いで、甘ったるく俺を呼ぶ。 「今、何時?」 毛布が肩から落ちてしまっても尚、俺は夢の中に居るような、ふわふわした気分だった。 「夕方五時すぎ」 「……はあ!?」 テーブルの携帯を掴んで画面を触ると、17:34と表示されていた。 「やっべ。依頼品は?」 「ああ。バイク便へ渡した」 「宛先とか住所とか、色々あったのに」 「椿に電話して聞いたよ。あいつのミスでもあるんだから、太陽一人で頑張ってたことも伝えた」 「はあ!?」 本気で何をしてくれたんだ。 キッチンの椅子で、コンビニかどっかで買って来たお弁当と炭酸飲料を飲みながら、苦い煙草の匂いをさせるKENNへ詰め寄る。 「おまえ! 俺が悪いのに、椿に心配かけさせんな」 「悪いね。家族愛とか理解できないから、そんな気使いできねーんだよ。――アンタが教えてくれるなら別だけど」 フフンとKENNが悪びれもせずに笑う。 「お前には確かに世話になった。なんなら、一回ぐらい願い聞いてやるよ。あ、舐めてやろうか?」 「まさか」 また、KENNが鼻で笑う。 俺の甘い誘いを一蹴りしやがって、腹が立つな。 「その代わり、俺とバイクで勝負しよう?」 「は? バイク?」 「いい加減、こんな風に足で使われるのもたまんねーけど、そろそろ、勝負してこの関係に名前が欲しいかなって」 「名前……?」 「俺とバイクで走って、俺が勝ったらアンタの恋人になるってこと」

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