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プロローグ
「……怒ってる?」
いつもの朝登くんじゃなくて、少し怖い。
何がいけなかったんだろうか。
俺が馬鹿だから、何か怒らせることを言ってしまったのだろうか。
「怒ってない」
短く吐き捨てるように言われて、悲しくなった。
そこまで冷たく言わなくてもいいのに、やっぱり怒ってるじゃないか。
服を掴んで縋りながらも、泣きそうになって下を向く。なのに。
「……本当に怒っていない。二度とあんな真似しない」
悲痛な感情が言葉に混ざる。不器用な彼らしい、短い言葉の中から感じる愛情。
「本当に怒ってないなら、キス、してよ」
背の高い彼の顔に近づくために背伸びする。じわりと広がった熱が、彼の耳を真っ赤に染める。
俺の耳に髪をかけたあと、躊躇いながらも下りてくる唇は額に。
不器用で照れ屋な彼らしい。俺はそんな君だから好きになれた。
『溺愛SILLY』
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