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再会/末次涼

 鳥の胸肉一キロ580円。ブラジル産胸肉が今日は安く買えた。  八人兄弟の長男だけあって、安くてもお腹にたまれる料理だけはできる。  カレーを鍋一杯作ろう。二日は普通に食べて、三日目はレンコンの素揚げ。四日目はカレーうどん、五日目は焼きカレー。一週間はカレーだけでも平気だった。  カレールー三箱、牛乳、玉子、食パン、鶏肉一キロ。レンコン、キュウリ、もやし。 両手に持ったスーパーの袋を持って宿舎の前に来て、その袋を地面に下ろしてしまった。 信じられない張り紙に、愕然とする。数秒前まで、貧乏ながらもカレーの献立で胸を弾ませていたつもりだったのに。 「……どうしよう、これ」 張り紙を眺めながら、途方に暮れる。流石に中に入れないわけではないようで、そこだけはホッとする。けれど、たった今からどうすればいいんだろう。 『お前は頭が弱い。困ったことがあれば俺を呼べ。いいな』 ……いつも頼ってしまう従兄の顔がふと浮かんだ。が、駄目だ。彼に迷惑をかけてしまう。でも、家に迷惑をかけるよりは、一日だけ彼にお世話になった方がいいのではないだろうか。  意を決し、恐る恐る電話をしようと携帯を取り出す。 「あ……」  万事休す。朝、充電祖忘れていた携帯は、電池がきれていた。真黒な液晶に、今にも泣きだしそうな情けない姿が浮かんでいる。それが面白くて、笑ってしまう。 急いで宿舎から自分の荷物を持ち出すと、ボストンバック一個に収まった。 問題はスーパーの中の食材と、従兄への連絡手段。  途方に暮れつつも、駅の方でまだ空いてそうなチェーン店のお店で携帯を充電させてもらおうと一歩踏み出す。  これからのことを考えると気持ちは重くなる。けれど歩くしかない。  

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