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再会/高崎朝登
俺は口下手なのは自覚がある。すぐに気の利いた言葉が出てこない。
本当はすごく焦っているのだが反応もできず、ぶっきらぼうだと冷たい印象を持たれてしまう。
だから、本当は再会した瞬間、嬉しすぎて居もしない神に感謝したぐらいだ。
もう少し、それが表情に出ればあの人に伝われば、すれ違わずに済むのに。
人を好きになる、それを相手に伝える、それを受け止めてもらう。
このプロセスが上手くいったことはなく、最近は面倒だと感じている。
*
閉店間際、残った食材の処理や明日の下処理をしていた時だった。
店のドアが、ゆっくり恐る恐る開けられ、顔だけ覗かせた男が不安げに中を覗き込む。
その端正な顔立ちの男に見覚えがあった。
「いらっしゃいませ」
「あの、すいません、お客じゃないんです。携帯の電源が切れて困ってまして。充電をさせていただけませんでしょうか」
「ああ、どうぞ。向こうのカウンターに……って」
「あ、……あー!」
申し訳なさそうにおどおどしていた男が、途端に笑顔になる。
笑うと可愛いな、と胸が高鳴る。
「……末次さん」
「嬉しい。覚えていただけていたんですね。出版社の、高崎さんですよね。わー。お久しぶりです」
嬉しそうに駆け寄ってきた男は、俺を見るや否や飼い主を見つけたワンコのように尻尾を振りだした。
一年近く会っていなかった末次涼さん。確か一つか二つ上だったはず。
下請けの印刷会社で働いていて、中世的な顔に黄色いヘルメットと作業着がミスマッチだったのを鮮明に覚えている。
一年ぶりの末次さんは少し髪が伸びていて、やや顔色が悪い印象だった。
それに旅行用のボストンバッグを肩に斜め掛けして、両手にスーパーの袋を二つ。
近くの、激安だけど品物は外国産の野菜が並ぶスーパーだ。
「どうしたんですか。旅行帰り?」
充電器を全会社ぶん持ってくると、俺と同じ会社の充電器に手を伸ばされた。
カウンターに座り、耳に髪をかけながら目を伏せる。
「んーん。会社が朝行ったら倒産してて」
「あ、倒産……倒産!?」
「工場にあるものは全部差し押さえられてて。俺、住む場所まで全部、社長に借りていたから、一夜にして家も職もなしだよ」
充電しはじめた携帯を見ながら、電源がつくのを待つ。
だから顔色が悪く感じたのか。きっと無理して笑っているに違いない。
「あるもので悪いけど、すぐにご飯作ります」
「いいよ。実は給料日前だったから、今、これだけしかないんだ。倒産が分かってたら一週間分の食材なんて買わなかったんだけど」
財布を取り出すと、使い古されたノーブランドのボロボロの皮の財布だった。
その中に五百円玉と少ししかお金が入っていない。
「疎遠になってた親戚に電話して、一晩お世話になろうとおもってる。だから、連絡とるために充電さえ終わったら出ていくから。ごめんね」
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