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第2話
そわそわした空気が漂う体育館で、壇上にあがる。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
藍桜学園生徒会長の、冬野 祐季です。」
キラキラした視線がちょっと痛いくらいだ。
体育館いっぱいに並ぶ新入生の顔を見ながら、挨拶を続ける。
窓から見える雲の切れ間から光がさして、後方の生徒の顔を照らした。
その中の1人がふと目についた気がして。
そっと視線を向けると、目があった。
眠そうな顔で光を浴びているそいつは、俺が探してやまない「春の妖精」だった。
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「…ちょう、会長!ぼんやりしてないで、続き!」
「ぇ、あ…」
副会長の声で目がさめる。
先生や生徒会のみんなが心配げにこちらを見ていて、ハッとした。
まだ挨拶の途中だった!
そのあとは何事もなかったように挨拶を終え、ステージをおりて席に戻った。
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入学式を終えても、なんだかぼーっとしていた。
生徒会の業務もなんだか頭に入らなくて、
すぐにでもあの名前も知らない妖精の元へ行きたかった。
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