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第1話

【恵果1プロローグ】 朝陽さん... 最後に貴方の姿を少しだけでも目に写せて良かった。 彼は都会へと旅立ち私はまた、いつものように生活を繰り返すだけとなったある日の事。 「恵果話しがある」 そう切り出した元の恋人。 彼とは、何だかんだと一番続いている人だったが 奥さんの妊娠と、私の事を知り奥さんが自殺未遂をしたと言う。 こんな私でも、存在だけで人の生き死にに関わってしまう起因を作ってしまえる事に驚いた。 優位なのは女性だろう?その女性を死に追いやる私は鬼か悪魔か。 愕然として、別れるという彼に私は鼻で笑うしかできなかった。 そして、最後だからと...この男は私を抱くのだ。 脱ぎ散らかし、荒々しく襲い掛かる飢えた獣の如く、私の中を暴いて行く。 指で荒らされ、ほぐれ切ってない私の中に入る前に彼は言った。 “俺がしなくても、他のを毎度咥え込む淫乱” その言葉に間違いはなく、私はきっと...この人が離れても他で満たそうとするのかも知れない。 酷く、荒く突き立てられて入口が裂けた様に感じ泣きながら受け入れる。 あの日朝陽さんが見ていた...あの時と同じ様に猛々しい滾りに突き上げられだらしなく咥え込む姿と重ね、彼の突き上げを朝陽さんに抱かれている様な錯覚に陥った。 ゴムがずるりと抜け出す感覚は、我に返るには充分で見れば男は私の髪を撫でて言う。 「またな」 付き合ってなどいない、あの男が求めるから体の関係だけで共に過ごしていたのだ。 別れると告げてなお私を縛るように次を示唆する言葉。 「もう、うんざりです」 恋愛感情などとうの昔に消え去り快楽を求めて欲を解消するだけの相手。 それでも、こんな醜い私を朝陽さんは好きだと言ってくれた。 それを、この男は平気で踏み込んできて荒らして帰っていくのだ。 妻の元へと。 朝陽さんがくれた、沢山の言葉、そのありがたい気持ちだけを支えに私もこの場所で頑張ろう。 そう思って、私は金輪際の誘いを断るようになったのだが、育児疲れだとある日あの男が私の所へと来た。 またな...と、不穏な言葉が現実になり、朝陽さんとの数日だけの交わりを彼は告発すると脅しに似た言葉に逆らうことは出来なかった。 拒み続けても私は喘がされる。 抜け出せないこの世界に、心底嫌になった。 朝陽さんが、近々こちらへ戻ると総代の言葉に私は愕然とするしかなかった。 【朝陽1 プロローグ】 春が来て、地元を離れ都会の大学に進学した。 一度だけ出した暑中見舞いには、ありきたりな言葉だけが記された返事が届いた。 それは、もう連絡を寄越すな、というメッセージにすら見えた。 もう泣く事すらなかった。徹底した拒絶。 最後に見た恵果さんは背筋を伸ばして俺を見て微笑んでいたのだ。 その姿だけを記憶にとどめておこうと心に決めた。 一人暮らしを始めて、生活の端々でいつの間にか似た面影の人を目で追っている事に気付いた頃、その記憶を振り切るかのように恋人を作った。 何人かと付き合い身体を重ねながら、時に行き場のないもどかしい感情を相手にぶつけ、気持ちを踏みにじるようなことをしていた。どうすれば相手の気持ちを揺さぶり、身体を開かせて自分を求めさせるか、そればかりを追っていた。 そんな時、所属の決まった研究室で、あの時の恵果さんと同じ年齢の院生に会った。窓際に立っていた彼の姿を見た瞬間言葉を失った。 恵果さんに背格好がそっくりな彼を、俺はすぐに口説き落とした。 骨格の似た人は声も似ている。 その人を抱く時は目を閉じて心の中で恵果さんの名前を呼ぶ。そして、俺の名前を呼ばせるのだ。深く繋がっている間に何度も求めさせながら。 いつかの、火鉢の熾火の音を思い出しながら欲情し、肌に痕を付けてゆく。 愛する振りなら、いくらでも出来た。 「ねぇ、そんなにしたい?俺のこと好き?」 簡単に聞いてくる彼を心のどこかで疎ましく思いながら、「愛してるよ」と繰り返した。 愛していない相手になら何だって言える。 どうしても忘れられない一人の人を手に入れられないのなら、相手は誰でも構わなかった。 ただ、誰を抱いてもあの時の震えるような感覚に至ることはなく、それが悲しかった。 働き始めて一年が過ぎた頃、父の体調がすぐれない為実家に戻るようにと連絡があった。 夏草の繁る頃、再びあの人に会う事になる。

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