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第22話

 「波留、結婚してくれる?」  「え、無理だって。アメリカなんて、英語も話せないのに無理」  これで今日は、二度目のプロポーズ。あの日からほぼ毎日プロポーズして断られ続けている。  「どうしてかなあ?セックスの時はあんなに素直なのに?俺は愛してるよ。それでもダメ?波留?」  「ザックは何でも言葉にし過ぎだと思うよ」  俺にしてみれば、波留が何も言わな過ぎるんだと思う。  波留は「公務員になる!」と、宣言し区役所で働くことになっている。窓口に波留がいたら小さい子も安心するんだろうなと、思う。  俺は空いた時間に英会話講師のアルバイトを始めた。日本語話せないふりをするのが辛い今日この頃。  この前も相槌を打とうと思って「うん」と答えてしまったくらいだ。  二人でアメリカ旅行するためにちゃんと貯金も始めた。とりあえずリズにはスカイプで波留を紹介しておいた。  俺のアパートは解約し波留のところに転がり込んだ。明希さんは安心したと言ってくれるが、風由さんは相変わらず冷たい。  那津さんは、大人の事情とやらで結婚するそうだ。  俺は波留のご両親にも挨拶に行き正式にお付き合いを認めてもらった。徹底した放任主義らしい。  波留が幸せならと言われて「幸せだよ」と、答える波留の姿に感情的になってしまいご両親の前で号泣してしまった。  そして、その日の夜は波留が気を失うまで抱きつぶしてしまい、翌日は口をきいてもらえなかった。  本当に幸せで、日本に行くと決心した過去の自分を褒めてやりたい。これまでの苦しい日々も蓮を思って日本語の勉強をした日々も全ては波留に出会うための助走だったのかもしれない。  蓮には匠が必要なように、俺には波留が必要なんだ。お互いが正しいピースを選んだんだと今なら分かる。  「ザック、匠さんが就職祝いにシャンパンと生ハム買ってきてくれるって」  なぜか匠も蓮も波留がお気に入りで最近は俺より波留に先に連絡をよこす。まあ、良いけど。手さえ出さなきゃ。  ああ、それからひとつだけ報告がある。波留の酔うとキスをする癖は俺と抱き合うようになってぴったりとなくなった。美咲さんいわく、「波留も少し欲求不満だったんじゃないの」だそうだ。  欲求不満だったかどうかは別として、俺たちは今毎日が蜂蜜の中で泳ぐような甘い生活を送っている。  これを幸せと呼ばずに何と言うんだろう。  Fin…… ----------------- 読んでくださった方へ ザックの恋物語はこれにて一段落です。 読んでくださり本当にありがとうごさいました

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