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勇気

「………」 教室に戻るの…気まずい… 俺は教室のドアの前に立ったまままだなかに入れずにいた 今はちょうど授業の直前なこともあってみんな教室に入っているみたいだった 中からは普段と変わらないような声が聞こえる あれから銀は本当に帰ってしまった 俺もそのまま帰ってしまおうかとも思ったけれど荷物は教室に置いたままだし、それに何より今俺も帰ったりしたら余計に角が立ってもっといずらくなってしまう気がした 「……ふぅー…」 大きく深呼吸する まだ怖かったし悲しかったけどでもだからってここで逃げ帰るわけにはいかなかった… …だって…今逃げたら銀とのことについてちゃんと説明できないまま中途半端な噂が独り歩きしてしまうかもしれない… ぎゅうっと目をつむって震える体を叱咤した ………帰れない… 「…ッ!!」 覚悟を決めてガラッと教室の扉を開ける 一斉に視線が俺に集まった 「!!」 「………」 さっきまでにぎやかだった教室がシーンと静まり返る 何人かが小さな声でひそひそと話していた 断片的にだけど『帰って来た…』とか『頬付クンは…?』なんて声が聞こえる 重苦しい嫌な空気が漂っていた 皆俺をみて苦笑いだったり、怒った顔だったり程度に差はあれど嫌そうな顔をした ……… 尻込みしてしまう自分を必死に励ましとりあえず自分の席まで行って座る ぽっかり空いた隣の席が寂しかった ………銀…… またあの冷たい視線がよみがえる… 大丈夫…大丈夫… 「………」 「………」 …大丈夫…きっと… 皆おどろいてるだけで少ししたら普段通りになる…はず……銀だって… 震える自分に言い聞かせる 自分で自分を励まし、慰めてやっとのことでココに座っていた …………………怖いよ……銀…

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