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ばかでおろかで最低な
「っち…ちがう…!!」
「!!」
「!?」
杉田が大きい声を出した
みんなびっくりして杉田を見ている
かくいう俺もびっくりした
「ち、ちがう…よ…違うに決まってんじゃん…だって、さ…銀男だよ?俺だって……」
「………」
「………」
へへ…っと杉田が笑う
愛想笑いというか…無理やり笑った感が強かった
本当の事を知っている俺と久遠さんと桜井さんには杉田が無理しているようにしか見えない
杉田が言うコトがなにかとんでもないことのような気がした
言いたくないことを必死に口にしているって感じだ
そんな杉田を見ると余計罪悪感がつのった
「あ、ありえないだろ…男同士だぞ、ハハッ…そんなの…」
聞いているこっちが悲しくなるような声で絞り出すように杉田がそう言う
なんだかただならない杉田の様子にみんなシーンとなっていた
「嘘?」「嘘か」なんてことを言ってるやつもいる
杉田も必死な様子だった
何とか嘘を取り繕うとしていた
でも…杉田は急に一点で視線を止めハッとしたような表情になった
悪い顔色が余計悪くなり唇がぷるぷると震えているように見えた
杉田の視線の先には頬付がいた
頬付はいろんな感情がないまぜになったような顔をしていてしばらく杉田を睨み付けるように見つめた後くるっとこっちに背を向けて教室から出て行ってしまった
「あ…ぎ…」
「………」
「!!ぎんっ!!」
杉田の悲痛そうな声が響く
でも頬付は止らず杉田もその後を追いかけて行った
「………」
「………」
シーンと一瞬教室が静寂に満ちる
「え…なに、じゃあ…やっぱマジ…なの?」
「さっきの感じ、じゃ、なぁ…」
でもすぐにガヤガヤとおしゃべりが始まって情報交換が行われた
あることないこと、事実と推測が飛び交い、心無い悪口みたいなことまで聞こえてくる
その様子を見て、さっきの杉田の必死そうな様子を思い出して顔が青ざめた
俺はなんてことをしてしまったんだ…
「藻府」
「…!!」
自分のしたことの残酷さに気付き、衝撃を受けていると声が掛けられた
横を見ると嫌悪感を丸出しにした久遠さんと目に涙をいっぱい溜めてこっちを見つめる桜井さんがいた
「…あんた……さいってい…」
「………」
久遠さんはそう吐き捨てると桜井さんの背中を摩ってどこかへ行ってしまった
………最低…
久遠さんに言われたことを再度頭の中で反芻する
自分でも自分自身がひどくバカでおろかに思えた
……俺は…最低だ……
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