894 / 1015
取り返しのつかない事態
イマイチ状況を掴めていない頬付が首をひねる
「なしたん?」
「…銀くん!!」
するとボス女がさっきまで杉田に詰め寄っていたのとは全く別の顔を浮かべて頬付に寄って行った
杉田はビクッと体を震わせて不安そうな顔をしている
久遠さんからはさらに非難の目を向けられたけど気づかないふりをした
目に涙を溜め芝居がかった様子でボス女が頬付に詰め寄り口を開く
「ねえ銀くん、杉田と付き合ってるって本当なの?」
「え?」
「そう言う噂があるのよ、杉田学と銀くんが付き合ってるんじゃないかって…ねぇ、嘘よね?私心配なの…」
自分が彼女であるかのように頬付にそう詰め寄る
頬付は状況を理解したらしく再度クラスを見回して杉田で視線を止めて少し考え込んでいた
ちなみにこの時俺も頬付に冷たい視線を向けられて背筋に悪寒が走った
多分頬付は何となく俺がばらしたんだとわかったんだと思う
申し訳ない気持ちでいっぱいだった
でも逆に少し安心もした
きっと頬付はここで杉田との関係について否定するだろうしそうしてくれれば今回の話はただのたちの悪い噂話で終わる
杉田と頬付に謝るのはもちろんだけれど、これで取り返しのつかないことになったりはしないだろうとホッとした
でも頬付が少し考えたのちに放った言葉は俺にも、多分杉田にも、そして久遠さんと桜井さんにも衝撃のものだった
「……あぁ…せやで…」
「…えっ!?」
「ッ!?」
「えぇぇえぇえぇ!?」
一拍置いたのちにクラス中から悲鳴が上がった
杉田も驚きを隠せないといった表情で頬付を見つめている
クラス全員が声をあげさっきまでシーンと静まり返ってたのが嘘みたいだった
数人の男子が思わずといった感じで杉田に駆け寄って声をかけた
「杉田今のマジ!?」
「マジで頬付と付き合ってんのかよ…」
「恋愛感情…なんだよな?」
「え…ゲイとか…そう言うのってこと?…」
「そう言えばこいつ志波にもさぁ…」
クラス中からやいやいと野次や質問が飛ぶ
頬付は頬付でボス女と取り巻に問いただされていた
杉田は目を白黒させていて
頬付は相変わらず飄々としてその様子を眺めていた
ボス女の取り巻や頬付ファンの女子までもが杉田に近付いていって金切り声をあげた
「ちょっと杉田あんたどういうことよ!!」
「いつからなの!?頬付くんが男となんて…ありえない!!」
わーわーと声が飛び交う
すると困惑して真っ青な表情だった杉田が突然大きな声をあげた
ともだちにシェアしよう!