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詰問
困惑した様子の杉田が気の毒だけどこんなみんなが注目している状況で『実は俺がばらしちゃいました』なんて言えるわけもなくおろおろと杉田を見守るしかなかった
久遠さんは不機嫌そうな顔をしていた
「……え、えっと…」
返って来ない挨拶とクラスメイトの冷たい視線を受け気まずそうに杉田が自分の席に座る
座っても一視にみんなの視線を受けて落ち着かない様子だった
そわそわして周りを見回して首をかしげている
あの様子だとまだ噂は聞いてないみたいだった
「………」
「………」
しーんと痛いぐらいの沈黙が教室に満ちる
すると別のクラスの女子…確か頬付にしょっちゅうすり寄って行って自分以外の女子が頬付と親しそうにしたり距離を縮めようとすると取り巻と一緒になって陰口をたたいたり嫌がらせしたりする感じの…なんて言うか…ボス?みたいな感じの子がいつもみたいに取り巻を引きつれて教室に入ってきて杉田に向かって行った
綺麗に整えられた眉を引きつらせ腕を組んで座っている杉田の前に仁王立ちする
「………ねぇちょっと杉田…」
「………?」
そして偉そうに杉田を見下ろし偉そうに声をかけた
杉田は困った顔のままだったけれどなんとかこの状況の原因を探ろうとしてるらしくボス女の話に必死に耳を傾けていた
「あのさちょっと聞きたいことあるんだけど…」
「…な、なに…?」
クラス中がその質問の内容を悟ってボス女と杉田に注目した
杉田だけがきょとんとしてボス女の次の言葉を待っていた
「あのさ…あんた……銀くんと付き合ってるってマジなわけ…?」
「………へ……?」
杉田が間の抜けた声を出す
……聞いてしまった…
クラス中の杉田への注目度が一斉に高まる
杉田も何となくそれを感じ取ったらしくひどく緊張したような困ったような顔になっていた
「……え、っと…」
「だから、頬付銀と恋愛感情で付き合ってるのかって聞いてるの」
「………」
杉田が黙ってしまう
視線がうろうろと空中を彷徨い顔色は悪く気の毒でならなかった
もう杉田の顔はまっさおだ
「なんかいいなよ」
「…あ……」
そんな杉田にボス女がさらに追い打ちをかける
でもちょうどその時再度がらっと背後で扉の開く音がして一斉に視線がそっちへ向けられた
「…?…あれ?なにこれ?」
「………」
その視線の先にいたのはもう一人の当事者の頬付だった
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