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気持ち悪い

「……なぁ…声かけてみろよ…」 「…はぁ?むりむり…お前行ってみろよ」 「やだよ」 「………」 こそこそと後ろからそんな声が聞こえる 後ろに限らず教室中から視線を感じ、ひそひそ声が聞こえる 今日は一日中こんな感じだった もうさすがに慣れる… 皆こんな感じで俺を遠巻きに眺めてひそひそと噂したりするだけだった せっかく銀とのことをちゃんと説明してわかってもらおうと思ったけど、皆俺が近づくとサッと離れてしまうから説明もできないままだ… 今朝俺に銀と付き合ってるのかって質問しに来た女の子は運よくと言うべきか別のクラスだったからあれ以来会ってない でもその子の友達?の女の子たちや銀の事が好きだった女の子たちは俺のクラスにいてそんな女の子たちはあからさまに俺を睨んでは目が合うとわざと俺に聞こえるように陰口を言ったりしていた 結構精神的にきついけど…でも銀にあんな顔されたことに比べたら大したこと無いように思えた ………銀…… 何気なくスマホを確認してみるけれど銀から何か連絡がきたりはしていなかった… 今朝あったばかりだけど無性に会いたかった 「……学…」 「………」 健斗が心配そうな顔で俺を見上げてきた 俺に気を使ってくれているんだとわかる 健斗やあと声はかけてこないけど桜井さんとその友達?の子は遠巻きに俺を心配そうに見ていてくれてそれが今の俺にはすごいありがたかった 「……大丈夫だよ…」 「…………ムリしないでね……」 健斗は俺の言葉を信じてないらしくなおも不安そうにしている 「なぁ…そう言えば紺庄もさ、そうだったよな…その…ホモ?」 「え…うわ、まじかよ…あいつら幼馴染だしさ…もしかして…」 「やめろよ、そう言う目で見ちゃうだろ…気持ち悪い…」 「………」 気持ち悪い… それが世間の一般的な意見なんだと今日改めて理解した 銀と出会うまではそんな人たち見たことなかったけどその時にそんな人たちを見てたら俺だって口に出さなくてもそう思っていたのかもしれない… 母さんと父さんに銀の事を話した時に言われた『いろいろ大変』の意味が身に染みて良くわかった でも…母さんに本当に大丈夫なの?って聞かれたときだって大丈夫だって言ったんだ… ……大丈夫…頑張れる… ぎゅうっと拳を握って唇を噛んだ 思えばこれは自分に言い聞かせていたのかもしれない ひそひそささやかれる噂話と、視線に怯える自分を鼓舞するようになんどもその言葉を頭の中で反芻し続けた

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