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仲直りしよ
ぎゅっとスマホを握りしめて走り続けた
喉がひゅーひゅー言うけど構わず走る
体中に汗が滲んでた
俺の家から駅まではちょっと時間がかかる
距離があるのもそうだし途中に長めの上り坂があって斜度は急じゃないけど長いから走り続けるのが辛い
その坂の途中でぜーぜーと息を吐いてると銀から今度は電話が来た
びくっと心臓が飛び上がるような気がした
とっさに心の準備もできてないのに通話ボタンを押してしまう
………ど、どうしよう……押しちゃった…
スピーカーを耳にあてられないまま画面の通話時間だけが増えていく
それを見つめるだけで精いっぱいだった
どうしたらいいかわからなくなって電話を切ってしまう
そしたらまたスマホが鳴って今度はメールが来た
『なんで電話切ってん』
…それかよ…
とりあえずゴメンと返しとく
またすぐに返信が来た
『会いに行くから待っとって』
そう書いてあった
胸がきゅうぅっとして照れくさいような恥ずかしいような気分になる
思わず電話を掛けなおした
銀は2コールで出てくれた
「……もしもし…」
銀の声だ……
自分からかけたのに銀の声を聴いただけで喋れなくなって涙が出そうになった
「……まな…?」
ぽろぽろ涙が出て来た
スマホの向こうで銀がふふって笑った
「なぁ、まな……仲直りしよ?」
俺はぼろぼろ泣きながらうんうんと首を縦に振った
銀は見えてないはずなのにまたふふっと笑うと「待っとって」って言った
「あ、の!!…さ…」
「…うん?」
「待ってる、から…駅いるから…」
「…………うん…」
そう言って電話を切った嬉しくて涙がぽろぽろ止まらなかった
大事な事はちゃんと直接言うんだ…
一度ぐっと涙を目で拭った
晴れやかな気分で駅に向かうためにまた走り出そうとした時
突然口と鼻が何か布で覆われてツンとした匂いがした
眠気に襲われてあらがえない
なんか…ねむ…だめだ…
そんな事をぼんやりする頭で思った
もっと別の事を考えないといけないのに頭が働かない
銀…待ってないと…駅行かないと…
そう思ったときにはもう意識が薄れてそのまますぐに意識を失ってしまった
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