490 / 1015
続・運命の人
「……え…じゃあ今お兄さんと一緒に生活してるんスか…」
「…せや…」
「っていうかお兄さんいたんスね…」
久々に健斗と猛もそろって昼ご飯を食べていた
銀は最近なんか…負のオーラみたいのが周りに見えるようになった…
ここの最近金さんが『無理やり』作ったお弁当を毎日持ってこさせられてげっそりしていている
しかも重箱…
前持ってこないで家に置いてったら金さん学校まで届けに来たらしい…
銀いつも小食だから最近はその弁当を俺と銀で半分残りの半分は健斗って感じで食べてる
おいしいけどなにせ量が多かった
毎日なぜかホットケーキ入ってるし…
今は健斗が猛の持って来た自分用の弁当をたいらげて銀の持って来た重箱の前に座って目を輝かせて金さんの作った弁当を食べていた
銀はなんだかんだで金さんともうまくやってるらしい
ちょくちょく俺の家に逃げてはくるけど…
「俺はお兄さん見たもんねー♥銀くん♥」
「うっさい、アホ」
「もうっ!!銀くん冷たいキスまでした仲なのに…」
「!?」
「あれはお前が勝手にやってきたんやろ!!」
「銀くん怒らなかったくせにぃー」
「き…きす…したの…?」
「それはもうあっつーいのを…」
「ほっぺや、ほっぺ」
そして何故か志波がニコニコして俺と銀の周りをちょろちょろしてた
俺は知らなかったけど今回志波もいろいろ助けて?くれたりしたらしい
その辺はちょっと感謝してたりする…
っていうかキス…
銀は別になんでもなさそうにしてるけどなんだかそれが余計モヤモヤした
「ちょっと銀…」
「?」
銀のシャツを引っ張って銀の頬に唇を押し付ける
銀が目をぱちぱちしてた
「しょ、消毒…」
勢いで自分が言ってしまったことだけどカァッと顔が熱くなった
銀がにやぁっと笑って、猛ははぁ…っとため息をついて、志波はきゃっきゃと女子みたいに騒いでる
ヤバいと思って猛の近くに逃げようとしたときには時すでに遅く…ぐいっと銀に引っ張られて胸の中に抱き寄せられた
「や、あ、あの…い、いまのなし…」
「だめ、無しは無し」
「!?じゃあ無しは無しは無し!!触んな!!」
「無しは無しは無しは無し、まなからやってきたんやもん」
そう言っていつもみたいに銀に捕まる
もうじたばたしても逃げられなかった
「そっちやなくてこっちのほっぺなんやけどなぁ…」
「なっ…」
「それにオレ兄貴にもちゅーされたんやけど、口に…ふっかーいの…」
「!?」
「ほらまな、消毒して?」
んーっと銀がキスを待つように目をつぶった
「し、しないっ!!」
「いてっ!!」
「あっち行け!!」
「えーまなオレが穢れたままでもええの?」
「もとから真っ黒だろ!!知らん!!」
「まなぁ~…」
銀の顔を押しのけて銀い背を向けて座る
銀は俺の背中にいじけたようにのの字を書き続けてたけど無視した
髪を引っ張ったり背中の筋を指でなぞったり頭を肩に押し付けたりしてきても我慢…
銀と俺はあんな事があったけど特に何も変わらなかった
でもそれでいいと思っている
今までどおりなのが充分幸せだった分かったから…
「あ、せや、まな週末映画行くんやろ?な?ほら、行ったるからぁ~まなぁ~無視せんといて~」
「……んだよ…」
「ほら?なんやったっけ?みたいの?ほら?」
でも銀は前よりちょっとだけ甘えてくるようになった
前よりも子供らしい面を見せてくれるようになった気がする
映画か…
銀と見に行きたいななんて思った映画を思い出してちょっと顔が熱くなった
「わ、笑うなよ…?」
「なに?えっちいのなん?」
「ち、ちがう!!う…『運命の人』…っていうのの…新しいやつだよ…」
「………」
そう言うとなぜか銀はピタッと動きを止めてしまった
女子高生が見るようなこてこての恋愛映画だしてっきり笑われると思ってたんだけど…
「運命の人」の2が何年か前に出てそれのさらに続編が出るんだよね…
健斗がコレの小説を持ってて昔無理やり読まされたんだけど結局ボロ泣きして大ファンになっちゃって…
映画版もドラマ版も全部DVD持ってたりする…初回盤を…主演AK○だし…
3もホントはDVDが出てからこっそり買って見ようと思ったんだけど健斗が映画館に見に行って面白かったとか言うから…
その健斗は猛に口を拭ってもらいながら銀の弁当をおいしそうに頬張ってた
こっちの話は全然聞いてないみたい…
ちょっとホッとした
ちらちらと銀を伺うけど銀はじっとしている
そしたら突然銀がふわっと優しそうな顔をして笑った
な…なんか…こわい…
「な…なんだよ!!わ、笑えばいいだろ!!いい!!行かない!!」
「あ、ちゃうって、いこや~あれな1見たことあるんよ~」
「………」
「な?2ってどんなんやっけ?」
「………家にDVDある…けど…」
「えーじゃあ一緒にそれも見よ?」
「…………別にみたいなら…見せてもいい…」
「ふふっ、まな一緒に見るって言うたらええのに~」
「!?うるさい!!」
さっきの優しい感じで顔はひっこんですぐいつもの調子の銀に戻った
変な銀…
その週末
俺と銀は近所の映画館に映画に行った
珍しく寝ずに映画を見てる銀を見た
っていうかそれが珍しすぎて全然映画の内容頭に入ってこなかったけど…
でも銀が映画の後になかなか面白かったなって笑って言うからそれならいいかなって思えた
【銀の過去編 おわり】
ともだちにシェアしよう!