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素直じゃないけど。
日向明日香 23歳。俺には高校生の恋人がいる。
そしてその恋人というのは……
「オッサン、腹減った。」
この
金髪、両耳のピアス、マスクに着崩した制服
の見た目ヤンキー
永井彼方 高校2年生(男)である。
今は学校&会社からの帰り道。
今日は俺がたまたま早上がり出来たので、わざわざ、わざわざ!彼方を迎えに行ってやった。
「知らん。それから俺はオッサンじゃねぇ、お兄さんだ。」
「俺16歳、アンタ23歳、7歳違えばもう立派なオッサンだろ。」
「テメェ……」
そしてコイツはツン9.8割、デレ0.2割のほぼツンツンのツンデレだ。
超可愛くねぇ…
「それより俺腹減ったんだってば、どっか寄ろうぜ。」
「ヤダネ。俺は今金欠なんだ、腹減ったんなら寄り道しないでお家に帰れクソガキ。」
「…………。」
……何だ?どうして喋らねぇんだ?
隣を見ると彼方の眉間に皺が寄っている。
これは彼方が拗ねたときの癖のようなもの。
は?何で?拗ねてんの?
「…俺は………」
「? 何だよ…?」
また喋らなくなる彼方。
「…………もういい、帰る。」
「あ゛?どうしたんだよ急に?」
「うるせぇオッサン。しね!」
「ちょ、おい!!」
捨て台詞を残して早足で帰っていく彼方を、俺はただ呆然と見送っていた。
「意味わかんねぇ……??」
──「って事があったんだよ。」
…ここは俺が働く○○社のオフィス。
俺が今話しかけているコイツは、同僚の長谷部秀一といい、同じ編集の仕事をしている。
因みに俺の幼馴染みでもある。
「そりゃあお前が悪いな。」
は?俺?
「俺何か変なこと言ったか?拗ねられるようなこと何もしてねぇぞ?」
「いやいや、たぶんその子お前と一緒に居たかったんだろ?」
そう言って長谷部がコーヒーを啜る。
「どういうことだよ?」と訊くと
「お前ホントに鈍いな…。お前らって週末位しか会えないわけだろ?」
「まぁな。」
俺は仕事があるし、アイツは学生だし。
「それに下手すると、仕事が延びて週末も会えない日もあるわけだ。」
「まぁそうだな。」
「つまりだ、」と長谷部が続ける。
「週末にしか会えない恋人と珍しく平日に会えたのに、デートに誘ったらお家に帰れと断られたから、拗ねたんだよ。」
デート?
「ちょっと待て、俺はデートに誘われた覚えは一切ねぇぞ。」
俺もコーヒーを片手に、昨日の事を思い返す。
「お前マジで言ってんの?ご飯行こうって言われたんだろ?」
「でもあれはなぁ…。」
ご飯行こうっていうか、腹減ったっつって言われただけだぞ?
あんな乱暴な誘い方あんのかよ。
彼方さんよ、いささかツンツンし過ぎじゃなかろうか?
「とにかく、」
長谷部はコーヒーを手に席から立つと、
「ちゃんとお前の方から謝っとけよ。今の若い子はすぐ気が変わるから、その内捨てられっぞ。」
と言い残し何処かへと行ってしまった。
「んなこと言われてもな…」
(謝ろうにも、連絡が取れないんじゃどうしようもないだろう。)
あれから俺は何度か電話やメールを送ってみた
が、どれだけ待っても返事は来ず、俺の携帯からは空しいコール音のみが流れた。
あのクソガキ、電源ごと切ってやがる。
「ん~~…。どうしたもんか………。」
俺はカップに残っていた冷めたコーヒーを一気に飲み干した。
「まず…。」
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