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素直じゃないけど。②
プルルルルルル…
次の日の午後、俺はある人物に電話をしていた。
「はい、もしもし?」
「もしもし、俺だけど。」
「……オレオレ詐欺ですか?」
「あのなぁ……」
「判っててやってんだろ」そう言うと機械の向こう側からクスクスと笑い声が聞こえる。
「お前俺のことバカにしてんのか。」
「すみません、別にバカにはしてませんよ?おちょくってるんです。」
「おい!!!」
一緒じゃねぇか!!
「フッ…」
このさっきから人の事を弄んでるコイツは、俺の恋人彼方の兄貴で、永井遥遠。
実を言うと俺はこの兄貴がとても苦手だ。
いつもニコニコ笑って、腹の中でなに考えてるのかさっぱり分からない。
向こうも弟のことをたぶらかした(別にたぶらかしてはいないが)俺のことを嫌っているようで、今みたいにチョクチョク毒をはく。
「フフッ、失礼しました。で、ご用件は何でしょうか?」
「いや、そのなんだ、彼方のことで、ちょっとな。」
「…彼方?」
電話の向こうからドス黒い空気が流れてくる。
俺の弟に何かしたのか、そんな声が聞こえてきそうだ。
背中を冷や汗が伝う。
ははは、こえ~…
「彼方が何か?」
「だから、えっと…、彼方、元気か?」
「…ここ数日、食欲がないと言ってご飯をあまり食べてくれませんが。」
お前のせいか、とさらに空気が黒くなる。
「そうか……今、彼方はそこに居るのか?」
「いえ…出掛けてます…、場所お教えしましょうか…?」
え、何か今日は優しいな。
え、なに、怖っ!
「……………。」
「何です、知りたくないんですか?彼方の居場所。」
「い、いや、教えてくれ。」
俺が黙ったことが気に食わなかったのか、更に不機嫌になった声で教えてくれた。
「悪い、ありがとな。」
「いえ、不本意ですがあなた方が喧嘩したままだと、私も困るので。」
「お、おぉ……」
「それから…」通話を切る直前、遥遠が
「それから、ひとつ。
…彼方のこと泣かせてみろ、ただじゃおかねぇからな。」
と、えらくドスの利いた声で言い残して通話が途切れた。
「ブ、ブラコン怖ぇ……。」
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