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足りない。⑤裏
「彼方!」
教室内で駄弁っているクラスメイトを避けながら近付いて、俺は出来るだけ明るく声を掛けた。
「…ん?あぁ、お前か。」
「お前かって…俺で悪かったな!!!」
「おー…」
まただ。
彼方はスマホを握り締めたまま頬杖をついて窓の外を眺めていてぼんやりとした様子だ。
俺は前の席に後ろ向きで座り同じように肘をついた。
「…彼方、お前最近どうしたんだよ?何かあったのか?」
「………ん~…」
「彼方ぁ~……」
「ハハ、マジかー。」
「………………。」
ダメだ、コイツ完璧聞いてない。
ちょっと悲しくなってきた…
その時、ガララッと教室の扉が開いて担任が入ってくる。
「ショート始めるぞー席つけー」
皆が自分の席に戻り始める。
「なぁ彼方~」
「あ、あの……武井くん、そこ僕の席…」
「ホントどうしちまったんだよ~」
「だから僕の……」
「俺を構えよ彼方ぁ~!!!」
「ぼっ……………。」
「結人うるさいぞー、さっさと退いてやれ。」
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