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考えただけで胸がズキンと痛んだ。何を言おうしているんだ、渥。せっかく再会できたのに、訳の分からないことばかり言うのはやめてくれ…!!! 「じ、じゃあ…!じゃあなんで俺の家に来たんだよ!俺に会いに来てくれたんじゃないのか…?」 渥の方に体ごと向けて訴える。渥は俺と視線を絡めてフ…と笑った。 その笑顔は先ほど見せた俺の好きだった笑顔ではなく、作り物のような笑顔だった。 「お前に会いに来た、か。そうだな。それはあながち間違ってない。けど、目的はそうじゃない。俺はお前に忠告をしに来ただけだ」 「忠告…?」 渥は俺の背後に腕を置き体重をかけると、息がかかりそうなくらい顔を寄せた。 そして俺の瞳を感情の読めない目で捉えたまま口を開いた。 「もう二度と俺に話しかけるな。近寄るな。お前と話すのはこれで最後だ」 告げられた言葉の意味が理解できないまま、とにかく泣きたくなった。 渥は酷く残酷な言葉を吐き出した後すぐに俺の横から立ち上がり、傍にあった温もりが早急に離れていく。雨が降っているせいか肌寒さすら感じた。 「そういうことだから。邪魔したな」 離れていくその姿に俺は思わず手を伸ばしていた。 グイッと渥の離れかけた腕を掴む。 「待てよ…!そんなのいきなり言われたって俺は納得できない。…なんでだよ?お前がαだからか?俺と知り合いだと思われたくないからか?」 「そうだと言ったらどうする」 渥がこちらを振り向かず返してくる。 違う、そう言ってくれると頭のどこかで思っていたのかもしれない。予想外の返答に一瞬息が詰まった。ギュッと渥の腕を掴んでいた手が、ほんの少し緩んでしまう。 「………渥はそんなことを言うやつじゃない…」 「じゃあなんで聞いてきた?少しでもそう思ったからじゃないのか。それとも俺に、違うと言って欲しかったのか」 「…!」 心の中を見透かされたような発言に顔が熱くなる。 遠慮なく心を突き刺してくる言葉たち。ああ、嫌だ。こんな場所早く逃げ出したい。 でも…

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