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緩みかけた手をもう一度ギュッと握り閉めた。 「そうだよ。…俺はお前と友達でいたい」 「…なんでそんなに俺にこだわるんだ。お前今日ケーイチと仲良くしてただろ」 「俺は……!」 俺は。 なぜだか次の言葉が出てこなかった。 俺はどうしてここまで渥にこだわってるんだろう。 言葉に詰まる俺に対して渥が俺の名前を呼んだ。 「………睦人。俺はαだ。αじゃないお前は俺に惑わされてるだけだろ。俺に対するお前の気持ちは感違いだ」 「言い切るなよ…」 感違い…本当にそうだろうか。 確かに力のあるαには人々を惹きつけ、まとめあげトップとして舵を取っていくことができる力がある。証明するように今日、学校で渥から感じたものは他を圧倒するものがあった。 その力に俺はただ惑わされてるだけなのか。 俺の気持ちが揺れたのを感じ取ったのか渥は感情の無い声色で言う。 「とにかくもう話すことはない。じゃあな」 わりと強い力で腕を引き抜かれ、渥はその長い足でさっさと部屋を出て行ってしまった。 呆然と渥の出て行った扉を見つめていると、階下からドアがガチャンと閉まる音がした。 ああ、出て行ってしまった。 また渥は俺の元から去ってしまった。 だけど今回は転校して行ったわけでは無い。きっとまた学校で会える。 それなのに俺の胸は10歳の時に離れ離れになったときよりもズキズキと痛み、なんだか呼吸がしづらい。 ぎゅう…と胸のあたりを掴む。そうすることによって少しは気が紛れるような気がした。 「…つーか…俺がαじゃないの確定事項かよ…」 自嘲気味に呟いた言葉は窓越しに聞こえる雨音に掻き消されていった。

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