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第3話
転校初日があまりにも濃すぎて気疲れしたのか、朝起きると家を出ないといけない時間になっていた。
「えっ…嘘…え…ヤベエ!!!」
転校2日目から遅刻決定。
ちなみに母はパン屋のパートを見つけていて朝がとても早く既に家に居ない。
そう、寝坊していても誰も起こしてくれないのが我が家だ。
ってそんな悠長なこと言ってる場合じゃないだろ!俺!!
ーーー
ものすごい慌てて校舎に駆け込むと、見たことのある姿がのんびり歩いてる姿が目に入った。
「あれは……佳威…!?」
走りながら呼ぶと気怠げに佳威が振り向いた。ふぁ~という欠伸込みだ。
「お~す」
「佳威!遅刻だぞ!急がないと!」
「朝からそんな元気ねえよ」
「しっかりしろ!まだ若いだろ!急がないなら先行くからな!」
「まあ、待てよ」
走りながら佳威の横を通り過ぎようとしたらガバッと肩に腕を回されて捕まった。
くそ!今日もいい匂いだな!?
「わー!?なんだよ!?離せ!俺は転校2日目から遅刻する訳には行かないんだ!」
「まあまあ、今更急いだってどうしようもねえから」
「そんなことない!まだチャイム鳴ってないだろ!」
「もう鳴るって」
と言ったそばからチャイムが高らかに鳴り響いた。
「あ………」
「あーあ、鳴っちゃったな。ドンマイ」
「ド、ドンマイじゃないよ!バカー!」
思わず叫んでいた。
そんな俺に対して佳威は機嫌が良い。
「睦人は朝から元気で面白いな」
「…今まさに元気じゃなくなったけどな…」
「まあ、大丈夫だって。安心しろよ」
安心しろって…一体どこからその自信が湧いて出るのか。
深いため息をつきながら、俺は佳威に肩を抱かれたままズルズルと校舎に入って行った。
「ザーーース」
佳威は遅刻に慣れているのか、なんの躊躇いも無くホームルームの始まっているであろう教室をガラリを開ける。
対して俺はというと遅刻に縁遠い学校生活を送ってきたので、内心ドキドキしていた。
クラスメイト達の視線が一斉に集まる。そしてもちろん先生の視線も俺と佳威へと向けられた。
わああ~転校2日目から遅刻してこいつ舐めてるなとか思われて怒られるんだ佳威の所為で…!
「光田…と浅香も一緒か。二人とも出席だな。よし、早く席につきなさい」
「はーい」
「え…あ、はい」
怒られるどころかそうにこやかに言われて俺は拍子抜けだった。
ただクラスメイトの視線は気になった。昨日も食堂で感じた視線。佳威との関係でも訝しんでるんだろうか。
…まあ、仕方ないか。
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