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「……実は俺もちょっとそれは思ってた」 特に香水をつけてるわけではないし、変わった柔軟剤を使ってるわけでもない。 それなのに良い匂いだと言う佳威。 Ωのフェロモンがαには凄く良い香りに感じるらしい事実があるだけに、もしかしたらそうなんじゃないか、と薄々感じていた。ヒートではないのできっと近寄らないと分からない程に微量のフェロモンが出ているのかも知れない。 「きっと、睦人はこれからαである佳威との距離に悩むんじゃないかと思ってさ…それならいっそ俺は睦人がΩだということを知ってるってこと、伝えたほうが上手く立ち回れるかなって」 ケーイチが申し訳なさそうにこちらを見た。 「ごめんね?」 「そんな…」 そんな風に表情を曇らせないでくれ、と思う。 きっとケーイチは優しいからすごく色々と考えてくれたに違いない。 考えて考えて考え抜いた結果、俺に全てを打ち明けるのが最良だと判断してくれたんだ。 それに対して俺が何か非難の言葉をかける理由は、ない。 「ありがとう…ケーイチ。俺こそ、嘘ついてごめんな」 「ううん、それは仕方ないことだと思うよ。俺がこの学校のΩ達に慣れ過ぎてたんだよね。普通に考えたら自分がΩだなんて言いふらすのは危険な行為でもあるのに」 「この学校に来といて黙っておきたいなんて思う俺の方がおかしいんだよ。ここのΩ達の方が賢明だよ」 「……睦人もやっぱり、番を探しにこの学校に来たの?」 ケーイチがひとつひとつ言葉を選びながら慎重に発言してくれている。 そんな姿にも気遣いというか、優しさを感じて心が少し暖かくなる感じがした。 「まだヒートが来たことないから、自分がΩだって自覚は薄いんだけど、うん…まあ一応ね…耳がタコになるまで聞かされたからさ。Ωはαと番になることで幸せになれる。フェロモンは番のαにしか効かなくなるから性犯罪にも巻き込まれなくなるし、社会進出もしやすいって」 「そっか…」 「でも今は抑制剤もあるし、俺はそこまで必死になって番を見つけようとは思ってないんだけどね」 ケーイチに向かって笑いかけると、少しびっくりしたような顔をして、それからゆっくりと笑い返してくれた。 「…それにしてもヒートがまだ来てないって珍しいね」 「そうなんだよなー、まあ俺としてはこのまま一生来てくれなくても問題ないんだけど」 「それじゃあホルモンバランス崩れちゃうよ。でも余計心配だね。いつ来るか分からないってことでしょ?」 「そうなるな。でも、ま、なんとかなるだろ!来てもいざとなればここに逃げ込めばいいし!」 「俺の部屋でもいいよ。匿ってあげる」 そう言ってケーイチはイタズラっぽく微笑んだ。

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