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加えて、俺に対して放たれる濃すぎる程のαの香りに胸が痛いくらいに締め付けられた。
αにもフェロモンなんてものがあるのだろうか。あったとしても大多数に向けられるΩのものとは異なり、感じるのは目の前の俺ただ一人だと確信を持つ。他を見ないように、自分だけに意識を向けされるかのような――…
鼓動の高鳴りなのか、ズキズキと痛むものなのかも分からないほどに、強く位置が分かるくらいに心臓が脈打っていた。
なんなんだ、この感情は。
いっそこのまま無茶苦茶にして欲しいとさえ思ってしまう。
そして、どこか性急に事に運んでしまいたいと考える自分がいる。
「言っとくけど」
渥が少し熱い息を吐く。
Ωのヒートに当てられたαとはこうまでも艶やかに魅力が増し、俺を…Ωを求めるものなのか。そう考えただけで全身が震える。
しかし、次に渥が発した言葉に一気に体が冷えていく感覚に襲われた。
「俺はΩとは寝ない」
「……え…」
「お前だから。貴重な“幼馴染”の為に一肌脱ぐだけだ。深く考えるな」
続いた言葉を耳にし、言葉の意味を理解できた瞬間。
ギリギリで保たれていた俺の理性を繋ぎ止める細い細い糸が「プツン」と小さく音を立てて、切れた。
「も、なんでもいい…よっ…体が…熱いんだ…。疼いてっ…我慢できない…。早くおれのからだ、さわって…」
「…そういうのも教わるわけ?上手なαの誘い方、みたいなの」
無意識に腰を擦り寄せると、気付いた手の平が俺の下半身に伸びた。上と同様にズボンもスルスルと脱がされて、渥の腕の中で俺は一糸纏わぬ姿となる。
火照る体に冷たいシーツが心地よかった。
「あ、つは…?ぬがない、のか?俺だけ…は、恥ずかし…」
「恥ずかしいの好きだろ」
そう言って遠慮なく渥の視線が、曝け出した裸体に降り掛かる。確かに言われた通り、物凄く恥ずかしいのに羞恥さえも今の俺には快楽だ。
渥の男性にしては繊細な手が、存在を主張する俺の中心を握り込み先端に触れる。グチュという音と共にグリグリと弄られ、直接的すぎる快感に首を仰け反らせた。
「ンぁあッ…!?」
「もう先走りでぐちゃぐちゃだな。キスだけでこんなになったの?」
「やっ、いきなり…ぃ!刺激つよすぎっ、るって…っ」
「そう?そのわりには嬉しそうにしてるけど」
渥は上半身を離し、俺の足の間に腰を落ち着けると両足を持ちぐいっと腹の辺りまで持ち上げた。
「へ、あ…ぁ…!?」
両膝裏に手を添えられて大きく開脚させられ、俺の大事な部分は全て渥に丸見えだ。それもこんな至近距離で。
いくらヒートで訳が分からない状態になっていると言っても、あまりの恥ずかしさに全身が茹で上がりそうになってしまう。
よっぽどの事がない限り他人には見せない秘部を見下ろしながら渥が、ふ…と薄く笑った。
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