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せっかく出してくれたお茶を口に含みながら、俺は狩吉さんの隣でそれはもうガチガチに緊張していた。 あまりにも近い距離は緊張の糸をさらに張り詰めさせる。しかも狩吉さんもすぐには喋り出さず、室内は静かだ。 なんの苦行だろう、これは。 「ねえ」 ある種の修行を受けている気持ちになっていた時、最初に口を開いたのはもちろん狩吉さんで、急いで顔を向けると目が合った。 ここには俺と狩吉さんしか居ないので目が合うのは当たり前だが、色んな意味でドキリとしてしまう。 「さっき一緒に居たヤツ、だれ?」 「…さ、さっき…?」 「教室で喋ってたヤツ」 「…………あっ。あいつは、友、達です」 叶のことか。何故そんなことを聞くのかと思いつつも素直に答えた。別に隠すこともない。 「好きなの?そいつのこと」 「好…?…そ、そりゃあ、友達だし…あの、嫌いじゃないです」 「俺よりも?」 「…え…!?」 サラリと聞こえた台詞。 ギャルゲでよく見るような、女の子が頬を染めながらうるうると涙の溜まった瞳で見上げてくるアレだ。 わたしよりも、あの子のことが好きなの…? しかし俺の現実では、目の前にいるのは男で頬を染めるどころか無表情だ。萌えよりも恐怖を感じる。 そもそも狩吉さんを好きかどうかなんて俺には分からない。今まで恐怖の対象だったわけだし、接点も何も無かった。 やっぱり怖いと思うし苦手な部類の人間だ。 しかし、怖くて苦手だからと言って嫌いか、と言われると握り締めたコップを思い出して…嫌いな訳ではないとも思う。 「……その…ま、まだ、狩吉さんのこと、よく知らないから…分からない…です」 だから思ったことをだいぶ勇気を振り絞って言った。 もちろん狩吉さんの前で嘘をつく勇気がないというのもあるし、仮に嫌いだとしても嫌いだなんて口が裂けても言えないのが本音でもある。 「じゃあ、これから俺のこといっぱい知って」 舐めたこと言ってんじゃねえ、なんて返答される可能性もあったが、狩吉さんからはそんな答えが返ってきた。 「いくらでも教えるから、いっぱい知って俺のこと好きになってよ。そんで、安成の一番を俺にして」 ジッと見据えてくる瞳はとても真剣なものに見えた。肉食獣みたいなギラギラした瞳の力強さと鋭さに、俺は呑み込まれてしまう。 こんな瞳で、こんな表情で見つめられたら、例えどんなことでも頷いてしまうかも知れない。 狩吉さんが俺の頬に優しく手を添えた。 「昨日の、ちょっと軽く見えたかも知んないけど、俺本気だから。覚悟しといて」

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