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少し意地悪そうに笑う狩吉さんは何だか年相応に見えて、しかもそんな笑い方もできるだと新たな発見に戸惑う。 まだ俺は狩吉さんに関して怖い部分しか知らない。 だけど、少しだけ。 ほんの少しだけ彼の笑顔は好きかもしれない、なんて思ってる自分がいたりするんだ。 「………」 いやちょっと待て!落ち着け落ち着くんだ安成…!!俺は夢見る乙女か。いつの間に少女漫画の主人公になったんだ。俺みたいなどこにでもいるビビリなんて良くてモブだろ。漫画に登場できただけでも奇跡なモブキャラだ…!調子に乗るな俺えええええええええ 己の恥ずかし過ぎるポエミーな思考に顔が真っ赤になっていく。まるであたかも狩吉さんのセリフに顔を赤らめたように見えるが断じて違う。 「?…安成どうしたの?」 「ふへっ…や、なんでもないれす…!」 狩吉さんが顔を覗き込んでくるが、今は勘弁してほしい。顔を背けようとしたが、頬に添えられていた手がそのまま後頭部の方にスルリと伸びて引き寄せられた。髪の間に侵入してくる指が擽ったい。 「…ねえ、チューしたい。していい?」 「いっ…え、いや…!……ンッ」 それ聞く意味あった?と思うくらい間髪入れず狩吉さんの顔が近付いてきて唇が重ねられた。 これで何回目だろう。3回目…?まだ付き合って1日しか経ってないのに…手が早い…気がする。 なんて思っていたら狩吉さんの方からぬるっとした感触のものが伸びてきて今日一の驚きにバッと顔を離してしまった。 「ふぁっ……!?え?え?」 今の何!? 戸惑いを隠せない俺に、狩吉さんも驚いた顔をしている。 「え、なに?ベロチューだめ?」 「ベロ、ちゅ……ぅ!?」 あれが噂に聞くベロチューですか!?ディープなアレですか!?漫画でしか見たことないよ俺!! 「そんっ…、あ、俺初めてで…」 「初めて?誰かと付き合ったことないってこと?」 なけなしのプライドを削る質問に頷きたくないが首が取れそうになるほど頷くと、狩吉さんはそれはもう花が咲くようにふわあと華やかに笑った。 叶に暴露した時なんか大口を開けて爆笑されたというのに、なんだこの笑顔の違いは… 思わず見惚れてしまった俺に、狩吉さんは笑顔のまま再び顔を近づけて来る。 「安成の初めて、全部俺のにできるんだ」 「は…」 「お前が知らないこと一から教えてあげる。口開けて」 「……はひ」

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