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きっかけは暇潰しだった

この世界は人間界と魔界に別れていて、それぞれが独立して暮らしている。 暗黒海(あんこくかい)という、真っ黒な海を隔てて西の国と東の国に別れている。 こちらは東の国で、たくさんの島々がある。 そして、その中でも大きな島が鬼ヶ島だ。 読んで字のごとく、「鬼」が住んでいる。 鬼ヶ島は人口密度が高く、鬼が増えるにつれて、建物がどんどん上に建てられていた。 建物は主に朱色に塗った木造で、屋根は瓦葺き。 火山が近くにあるから、年中暖かい。窓ガラスはなく、簾や布で室内を見られないようにしていた。 風が吹くと、布を張っているところはふわりと靡く。 鬼ヶ島は朱色の摩天楼の街だった。 そして、その中でも一際高い建物がある。 壁や柱は朱色で塗られ、金色の鬼瓦が輝くそこは、「鬼ヶ城(おにがじょう)」と呼ばれ、鬼の首領が住んでいる。 城の一角で、囲碁を楽しむ鬼が三人いた。 「っだー!また負けた!!」 赤髪の天然パーマを掻きむしって悔しがっているのは、鬼ヶ城の若・鬼八郎(きはちろう)。 なかなかの男前で、性格も明るく、さっぱりとしている。 街にもよく顔を出すため、街の鬼たちの中でも人気者だ。 「若は単純なんだよ」 黒に近い青い髪で、特に表情を変えずにさらりと返した男は、鬼一(きいち)と言う。 鬼八郎とは、乳兄弟で幼い頃から一緒である。 頭も良く、切れ長の目は歌舞伎役者のようで、見つめられた女は皆鬼一に惚れ込むと評判になるほどの色男だ。 「やっぱり兄貴は強いっすね!それに比べて若は、いっつもおんなじ手っすね」 からからと笑うのは、鬼三(きさ)と言い、鬼一の弟分である。背も二人に比べると低く、幼さが残る。 黒髪を所々金色に染めており、八重歯がちらりと覗いているところが可愛らしい。 三人とも頭には立派な二本の角が生えている。 「あーあ、囲碁飽きたな……。なぁ、鬼一、なんか面白いことねぇかなぁ」 「あんたが囲碁しようって言ってきたんでしょうが」 鬼一は、窓枠に腰かけ、読みかけの書物を読みながら返事をした。 「あ!じゃあ、久々に闇市にでも行きますか?」 鬼三は、両手をぱんっと叩いて提案した。 「それに小耳に挟んだんすけど、目玉商品が出るらしいっすよ」と小声で二人に伝えた。 「目玉商品?何だそりゃ」 「うーん……なんか人間らしいんすけど、変わってるらしくてー」 鬼三の要領を得ない説明に首を傾げていた鬼八郎だったが、「やることねぇし、行こうぜ!」と鬼一と鬼三を連れて、闇市へと向かった。

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